メルコスール加盟国、ウルグアイの対中FTA予備調査実施を受けて反応

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ブエノスアイレス発

2021年10月04日

ウルグアイの外務省と経済財務省が9月28日、中国との自由貿易協定(FTA)締結に向けた予備調査の実施へ交渉チームが作業を開始したとの発表(2021年10月4日記事参照)を受け、メルコスール加盟国のアルゼンチンとブラジル、ウルグアイは異なる反応を示している。

ウルグアイ政府は、メルコスール加盟国としてアルゼンチン、ブラジル、パラグアイとの関税同盟を維持しながら対中FTA交渉を事実上開始することを考えているとみられるが、アルゼンチンはこれに反発している。9月20日に就任したアルゼンチンのサンティアゴ・カフィエロ外務・宗務相は、外務・商務省の公式ウェブサイトで「中国はアルゼンチンとの関係を重視しており、(それを損なうことになる)ウルグアイとのFTA交渉を正式なものにすることはないだろう」と述べた。また「中国と2国間FTAを締結するか、メルコスールにとどまるかのどちらかだ」とも主張している。

これに対して、ウルグアイ政府は「域外の第三国および地域との『関税譲許を目的とした通商協定の交渉』は全加盟国で行う」と定めた共同市場審議会(CMC)決議32/00は、加盟各国で批准手続きが行われていないため発効しておらず、よって個別の通商交渉は可能だと主張している。

ウルグアイの立場を支持するブラジルは、パウロ・ゲデス経済相が27日に「メルコスールを脱退するつもりはないが、メルコスールをイデオロギーの道具として受け入れるつもりはない」「メルコスールは世界経済に統合するためのプラットフォームであり、その機能を果たさないのであれば、近代化するし、それが不快ならば、去るべきだ」と述べ、暗にアルゼンチンを批判した。ただ、メルコスールではブラジルが強く主張する対外共通関税引き下げについての議論が先行しており、メルコスール加盟国が一体となって交渉することを既定した決議32/00の有効性についての議論は遅れているようだ。

中国の王剛(Wang Gang)駐ウルグアイ大使は記者会見で、他のメルコスール加盟国がウルグアイと中国のFTA交渉の動きに合流する可能性を問われると、「これは中国とウルグアイの2国間協定を意図したもの」と答えた。ウルグアイ国内の識者の中には、対中FTAの予備調査にメルコスール脱退シナリオとその影響も含めるべきとの意見もある。予備調査とその後の交渉の行方に注目が集まる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ビジネス短信 5b094d88a7b7c623