欧州自動車部品工業会、ハイブリッド技術の使用継続などを提言

(EU)

ブリュッセル発

2021年12月07日

欧州自動車部品工業会(CLEPA)は12月6日、欧州における電気自動車の普及に伴う雇用への影響に関する独自の調査(要約版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの結果を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会は7月に発表した気候変動政策パッケージ「Fit for 55」において、「2035年までの全ての新車のゼロエミッション化」、すなわち同年以降の内燃機関搭載車の生産の実質禁止を提案(2021年7月16日記事参照)した。CLEPAは欧州委の発表直後にも雇用への影響に懸念を示していた(2021年7月20日記事参照)が、今回発表した調査によると、2035年までに全ての新車が電気自動車に完全に移行した場合、部品部門では22万6,000人の新規雇用創出が見込まれるものの、現在、内燃機関搭載車の生産に携わる労働者の84%に相当する約50万人の雇用が2040年までに失われ、実質27万5,000人の雇用に影響が出るとした。

CLEPAによると、自動車業界の労働人口が製造業全体の5%以上に相当するEU加盟国は13カ国(注)あり、労働者の60%以上が部品部門に属する。CLEPAは「グローバルに活動し、資本も潤沢な自動車メーカーは内燃機関搭載車の生産事業を売却し、切り離す力がある。しかし、自動車メーカーと長期契約を結んでいる部品部門はそうした対応をすぐに取れず、またビジネスモデルの転換へ向けた投資が難しい専門的な企業や中小企業が多い」と、同部門が内燃機関搭載車の生産禁止に伴って受ける影響は、自動車メーカーとは異なると強調した。

ハイブリッド技術、再生可能燃料の使用継続などを求める

CLEPAはまた、「Fit for 55」で提案された二酸化炭素(CO2)排出基準は車両からの排出量のみを考慮しているが、CO2排出量を最小限に抑える技術の開発を促すには、燃料・エネルギー生産から車両の駆動までの過程全体での排出量を考慮する「油井から車輪まで(Well-to-Wheel)」アプローチに基づいた規制が望ましいとした。

例えば、燃料・エネルギー生産におけるCO2排出量の削減を考慮すべきだとして、自動車メーカーに、CO2排出量を抑えられる再生可能燃料を利用して排出基準の達成を促すような任意の仕組みの導入を提案。電動化を推進しつつも、ハイブリッド技術、グリーン水素、再生可能燃料など、あらゆる技術を活用すべきだとした。その場合でも、2030年時点で新車のCO2排出量を50%削減し、EUが掲げる気候目標を大きく損なうことなく、部品業界におけるイノベーションを促し、また雇用への影響もより緩やかに抑えられるとした。

(注)スロバキア、ルーマニア、スウェーデン、チェコ、ハンガリー、ドイツ、スペイン、ポーランド、スロベニア、フランス、ベルギー、オーストリア、ポルトガルの13カ国。

(滝澤祥子)

(EU)

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