投資環境の魅力は市場規模と成長性、2021年度海外進出日系企業実態調査(中東編)

(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、カタール、ヨルダン、クウェート、バーレーン、オマーン)

中東アフリカ課

2022年01月21日

ジェトロは1月13日、2021年9月1~30日に中東10カ国(注)に進出する日系企業を対象に実施した「2021年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」の結果を発表した(2022年1月20日記事参照)。その中から「投資環境」についての調査結果を紹介する。

中東の投資環境の魅力について、2021年の中東10カ国全体の回答では、「市場規模、成長性」(50.4%)が1位、「対日感情が良い」(44.3%)が2位となった。課題については、「突然の制度導入や変更」(55.7%)が1位、「法制度の未整備・不透明性」(53.9%)が2位だった。

国別の魅力を見ると、UAEでは「駐在員の生活環境」と「フリーゾーン/経済特区などのメリット」が上位2位を占めた。サウジアラビア、トルコ、イランでは「市場規模、成長性」が最多だった。国別の課題では、全体では法制度面が多かったが、イラン、イスラエル、トルコでは「不安定な政治・社会情勢」も上位に挙がった。そのほか、イスラエルとUAEでは「不動産賃料の高騰」が前年比で9~10ポイント増加した。

海外戦略における中東の位置づけについては、「5年前と比べた現在の位置づけ」「今後5年間の位置づけ」ともに「変わらない」と回答した企業が半数以上を占めた。その理由として、「資源・エネルギー分野における既存ビジネスの重要性は変わらない」などのコメントが複数あった一方で、「紛争リスクなどの不安定要素がある限り変わらない(重要性が増すとは言えない)」という声も聞かれた。

「5年前と比べ重要性が増した」(27.3%)と回答した複数の企業は、水素やアンモニアなどの新エネルギーや脱炭素プロジェクトを理由として挙げた。また、イスラエルのスタートアップや新技術、アフリカ市場への拠点、人口増加などに期待するコメントも見られた。「今後5年間で重要性が増す」と回答した割合は「5年前と比べ重要性が増した」より9ポイント高い36.2%だった。

駐在国の経済への貢献を聞く設問では、「貢献している」(47.1%)と「やや貢献している」(36.6%)と回答した企業が合わせて8割を超えた。貢献内容を国別でみると、UAEとカタールでは「貿易の拡大」、トルコ、サウジアラビア、イランでは「雇用創出」が最多の回答となった。イスラエルでは8割以上の企業が「投資の拡大」と回答し、最多だった。

現地従業員数や日本人駐在員数の過去1年間の変化と今後の予定については、多くの企業が「横ばい」と回答したが、イランでは過去1年間で現地従業員数は約6割の企業、日本人駐在員数は約7割の企業が「減少」と回答した。

(注)アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、カタール、ヨルダン、クウェート、バーレーン、オマーンの10カ国。255社に回答を依頼し、230社から有効回答を得た(有効回答率90.2%)。

(稲山円)

(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、カタール、ヨルダン、クウェート、バーレーン、オマーン)

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