中国のカーボンニュートラル、石炭の取り扱いに変化

(中国、香港)

香港発

2022年01月17日

2022年1月14日に中国税関総署が公表した統計によると、2021年の中国の輸出総額は前年比29.9%増の3兆3,640億ドルとなった。世界の新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、各国・地域での生産活動の回復が道半ばの中、ゼロコロナ戦略の下で、中国は堅調な生産活動により輸出を大幅に伸ばしている。これに伴い、中国国内の石炭を中心とするエネルギー需要は拡大し、2021年秋に発生した電力不足の一因になったといわれている。電力不足への対応に向け、中国政府は、主力の石炭火力発電所の稼働率向上の一環で、石炭の増産を推進。実際に、2021年9月の石炭生産量は前年同月比0.9%減の3億3,000万トンだったが、10月には4.0%増の3億6,000万トン、11月には4.6%増の3億7,000万トンと増産傾向が顕著となっている。

中国の2022年の経済政策の方針を決める2021年12月の中央経済工作会議では、正確に認識し把握すべき重要な理論的・実践的問題の1つとして、カーボンピークアウト・カーボンニュートラルが取り上げられた。その中で石炭については、石炭を主要なエネルギー源としている中国の基本的な国情に立脚し、石炭のクリーンで高効率な利用を強化しつつ、新エネルギーの受け入れ能力を高め、石炭と新エネルギーのベストミックスを推進するとされている(2021年12月21日記事参照)。

1年前の2020年12月の中央経済工作会議では、石炭消費の早期ピークを促し、新エネルギーの発展に力を入れる姿勢を示していた状況と比べると、石炭に関する取り扱いに明らかな変化がみられる。2021年年秋の中国の電力不足を受けて、中国国内のエネルギー安全保障を確保することと、グローバルな課題としての気候変動問題に対応することとを両立させる必要性があらためて認識されたものとみられる。

そのほか、2021年の中央経済工作会議では、「エネルギー消費量」を抑制することから、「炭素排出量」を抑制することに重点を移していくことも示されている。在香港の中国専門家は、中国政府が目標としている2060年のカーボンニュートラルの実現に向けて、新エネルギーの導入拡大を進める方向性に変わりはないものの、中国は今後、石炭の活用を前提としながら二酸化炭素(CO2)を削減する試みも進められる、と指摘しており、例えば、CCUS(Carbon dioxide Capture Utilization and Storage)といったCO2を回収・利用・貯留する取り組みがこれまで以上に重視されていくことが見込まれる。

(長谷川裕也)

(中国、香港)

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