米テキサス州で各種予備選、「2022選挙年」の幕開け

(米国)

ヒューストン発

2022年03月02日

米国テキサス州で3月1日、同州選出の連邦下院議員、州知事、副知事、司法長官、議員などの予備選挙が行われた。2022年は11月8日に中間選挙がある選挙年。本選を前に民主党、共和党の代表を決する予備選挙は全米各地で5月から9月を中心に行われる。テキサス州では他州に先駆けて行われた。

州知事の共和党予備選では、現職で3期目を目指すグレッグ・アボット知事、民主党では元連邦下院議員のベト・オルーク氏が当選確実となった(CNN米中部時間3月1日午後8時時点)。1月以降の各社世論調査をみると、アボット知事がオルーク氏を5~10ポイント差でリードしている。

11月の連邦下院議員選挙(注1)で、テキサス州では38議席が争われる(注2)。2020年国勢調査結果を踏まえ、現36議席から2議席増える。共和党優勢の選挙区が25、民主党優勢が13とみられている(270towin.com)。共和党は現在23議席のため、最多2議席を積み増す構え。下院の議席は現在、民主党222、共和党211(空席2)と拮抗(きっこう)する中、多数党支配を目指す両党にとり1議席の重みは大きい。

テキサス州では2021年9月、投票権を制限する効果があるとされる新投票法(SB1)が成立した。24時間利用可能な投票所や、ドライブスルー型の投票が禁止された(2022年1月26日付地域・分析レポート参照)。郵便投票の場合、申請時から運転免許証番号や社会保障番号などのIDの記載が新たに義務化された。

新投票法の影響からか、ハリス郡(郡庁所在地ヒューストン市)では、郵便投票の申請開始当初、ID番号や必要な署名がないとして差し戻された申請が4割以上と報じられた(AP2月14日)。2021年以降に投票制限法が制定された州はテキサス州以外に18州あり、「テキサス州で起きたことは他州の予備選挙で起きることの予兆だ」(新投票法に詳しい弁護士)とも指摘される。

注目されるトランプ前大統領の影響力

共和党の州司法長官選は混戦だ。現職のケン・パクストン氏がリードし、州公有地管理庁のジョージ・P・ブッシュ長官(注3)らが追う(同日午後11時16分、開票率70%)。仮に過半数の票を得る候補者がいない場合、1、2位の候補者が5月24日の決選投票に臨む。

この予備選が注目される理由は、パクストン長官とドナルド・トランプ前大統領の近さにある。同長官は2020年の大統領選後、激戦州の結果が無効と訴え(最高裁が棄却)、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件直前にはトランプ氏も登壇した集会に参加し「戦いをやめない」と訴えた。パクストン長官は2021年7月にトランプ前大統領から再選への支持を得ていることもあり、同長官の勝敗は州内でのトランプ氏の影響力を占う試金石との見方もある。

(注1)中間選挙では、テキサス州の連邦上院議員選挙の改選はない。

(注2)カリフォルニア州の52議席(現有比1議席減)に次ぐ全米2位

(注3)ジョージ・W・ブッシュ元大統領の弟であるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の長男。

(桜内政大)

(米国)

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