香港経由でのRCEP協定の活用に動き
(香港)
香港発
2022年04月07日
2022年1月に発効した、地域的な経済連携(RCEP)協定では、参加国のうち日本で4月1日に2回目の関税引き下げが行われた。香港はRCEP協定に未加盟だが、香港を介した貿易においてRCEP協定の利用を模索する動きがみられる。
具体的には、中国原産品の香港経由での日本向けの輸出に際し、在香港の関係機関が発行する未再加工証明(Non-manipulation)をもってRCEP協定の特恵税率を利用するというものだ。当地で工業用フィルムを取り扱う日系商社は、ジェトロへの相談を経て、香港総商会(HKGCC)が発行する未再加工証明を取得、日本側で同証明を提示したところ問題なく貨物の通関を終え、RCEP協定の低減税率が適用された。
ジェトロが確認したところ、以下の機関は未再加工証明を発行している。香港側で発行される未再加工証明をもってRCEP協定の特恵税率が適用されるかは、事前に日本側税関へ確認する必要がある(注1)。
【発行機関】リンク先は各機関の証明関連ページ
【必要書類】
HKGCCの場合、(1)Application Form、(2)Transport Document issued in China、(3)Export Transport Document、(4)Hong Kong Business Registration Certificateの4点。
【費用、その他】
HKGCCの場合、非会員企業のオンライン申請は310香港ドル(約4,960円、1香港ドル=約16円)。窓口申請は360香港ドル(3月末時点)。
RCEP加盟により香港の貿易中継機能が強化
当地報道によると、香港政府は2022年1月中旬、RCEP協定への加盟を申請したとされる(注2)。上述のとおり、RCEP協定の特恵税率を未再加工証明で利用できる事例が出ているが、RCEP加盟後には、連続する原産地証明(Back to Back Proof of Origin)が香港で発給可能となる。例えば、中国原産貨物を中継地である香港で分割し、各RCEP締約国や輸出する際、香港において分割貨物ごとに原産地証明を発給でき、輸入国は特恵税率での輸入が可能となることから、香港の中継貿易機能がこれまで以上に強化され、香港の価値向上につながる、と期待されている。
(注1)日本以外のRCEP参加国向けの輸出について、同様の手続きでRCEP協定の特恵税率が適用されるかは、各輸出相手国税関に確認する必要がある。
(注2)工業貿易署の盧世雄署長が2022年2月21日に開催されたウェビナーの中で明らかにした(「文匯報」2月22日)。なお、RCEP協定では、インド以外の国については発効日の18カ月後から加入可となる旨が規定されている。
(渕田裕介)
(香港)
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