日中間のオープン・イノベーションのための知財マニュアルとモデル契約書を公表

(中国)

香港発

2022年04月25日

ジェトロは4月22日、「日中オープン・イノベーション知財マニュアル ~特許庁モデル契約書 日中クロスボーダー版~」(以下、本マニュアル)を作成し公表した。

オープン・イノベーション(中国語で「開放創新」)は、異なる技術やアイディア、リソース、ネットワークなどを組み合わせて新たな価値を創出する取り組みとして、中国でも大きく注目されている。とりわけ、国境を越えたグローバル・イノベーションはさらなる可能性を秘めている。しかし、異なる法律やビジネス環境を有する国・地域との間の協業では、イノベーションの核心である知的財産の取り扱いを中心として、さまざまなリスクや留意点がある。

本マニュアルでは、そうしたリスクや留意点を踏まえ、日本企業が中国において現地企業などと提携してイノベーションを創造する際の知的財産に関する契約上のポイントをまとめた。特許庁の「研究開発型スタートアップと事業会社のオープン・イノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を基礎としている。

具体的には、(1)スタートアップが日本企業、事業会社が中国企業、(2)事業会社が日本企業、スタートアップが中国企業、である2つの場合を想定し、提携分野として「新素材」と「AI(人工知能)」の2分野に焦点を当てた。両分野における、秘密保持契約、技術検証(PoC)契約、共同研究開発契約、ライセンス契約および利用契約の留意点を紹介するとともに、日中クロスボーダー版モデル契約書とタームシート(契約の枠組みを項目別にまとめた表)を作成した。

留意点として、共同研究開発成果の権利帰属や改良発明の扱い、技術保証・特許保証、不争条項(注)の有効性などについて、技術輸出入管理条例など中国特有の法規制を踏まえ契約で明記すべき点や関連条文を紹介した。また、クロスボーダー契約であることを念頭に、紛争解決条項として裁判や調停以外に香港など第三国・地域における国際仲裁を選択することで、執行性を確保するオプションを示した。その他、「AI編」では、近年、中国で規制が強化される個人情報保護やデータセキュリティーに対する注意喚起を盛り込んだ。

本マニュアルが、実際のケースに応じて柔軟に活用されることで、日中間のオープン・イノベーションにおけるリスク回避および協業促進に寄与することが期待される。

(注)ライセンス契約において、ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンス技術に係る権利の有効性について争わない義務を負うことを内容とする条項。

(松本要)

(中国)

ビジネス短信 49f291386e208afd