北部緊急事態宣言を解除、国境警備強化は継続へ

(チリ)

サンティアゴ発

2022年04月21日

チリ北部の4地域に発令されていた緊急事態宣言(2022年2月25日記事参照)が、4月15日に解除された。同宣言は、主にボリビアやペルーとの国境からチリに不法入国する移民が急増したことで北部の治安が悪化し、事態を重くみた当時のセバスティアン・ピニェラ大統領が国境付近のセキュリティー強化のために2月15日に発令したもの。

マヌエル・モンサルベ内務次官官房は、緊急事態宣言終了後も内務公安省令265号(2019年8月13日公布)は引き続き有効で、これにより警察が行う国境警備に対し軍の支援が可能となると説明している。同省令は、国家の安全保障を目的として、不法移民、麻薬密売、国境を越えた組織犯罪に対抗すべく、軍が地元政府や警察当局と協力することを可能にしている。

不法入国者の国外追放は受け入れ拒否により進まず

4月20日付「エル・メルクリオ」紙は、新移民法の細則に基づき実行している不法入国者の国外追放について、プロセスがうまく機能していない様子を報じている。チリ捜査警察(PDI)のデータによれば、2月13日から4月11日までに7,206人の不法入国者に対して国外追放を実行したものの、そのうちの85%に当たる6,114人が近隣諸国から受け入れを拒否されている。ボリビアに受け入れを拒否された不法入国者のほとんどがベネズエラ人またはコロンビア人で、その後、国内のイキケとコルチャネ地域に設置された避難所に送られており、結局のところ北部地域にとどまる状況が続いていることが明らかとなった。

これらの状況を受けて、モンサルベ内務次官官房は、国境付近の地域の市長や知事らと会談を行い、域内の治安悪化を防ぐために警察と協力すること、移民急増による住宅不足を改善するため、政府による同地域への投資を拡大させること、の2点を取り組むべき課題として挙げている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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