パーム油輸出禁止に関する法令施行、国際価格への影響に懸念も

(インドネシア)

ジャカルタ発

2022年04月28日

インドネシア政府は4月27日、商業大臣規定2022年第22号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、パーム油原油(CPO)や、RBDパーム油、RBDパームオレイン(注)、使用済み食用油などについて、4月28日から一時的に輸出を禁止した。今回の輸出禁止は、量り売りパーム油の国内価格が1リットル当たり1万4,000ルピア(約126円、1ルピア=約0.009円)に下がるまでの時限的措置となる(「経済担当調整省プレスリリース」4月27日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。政府は、国内で食用油として広く利用されているパーム油の安定供給を目的としているが、世界の食用油価格への影響が懸念される。

パーム油の輸出禁止については、ジョコ・ウィドド大統領が4月22日に発表していた(2022年4月27日記事参照)。26日にはアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相が、輸出禁止の対象は精製したパーム油(RBDパームオレイン)のみと発表した(「経済担当調整省プレスリリース」4月26日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が、27日発表の商業大臣規定2022年第22号では一転して、パーム原油(CPO)なども対象に含めた。

輸出禁止の対象は、CPO(HS1511.10.00)、RBDパーム油(HS1511.90.20)、RBDパームオレイン(HS1511.90.36、1511.90.37、1511.90.39)、使用済み食料油(HS1518.00.14などの一部)、パーム油廃液(POME、HS2306.90.90の一部)となっている。アイルランガ経済担当調整相は27日の会見で「違反者には厳格に対応する」とコメントした。ジョコ大統領は「インドネシアは(パーム油輸出による)税収や外貨が必要なことは理解している」とした上で、「国内需要が満たされれば、規制は解除する」と述べた(インドネシア大統領府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。なお、インドネシア商業省の市場モニタリングシステム(SP2KP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、27日時点の量り売りパーム油の全国平均価格は1万7,300ルピアとなっている。

食用油の国際価格への影響懸念

英国の経済コンサルタント会社LMCインターナショナルのジェームス・フライ会長は「南米の干ばつにより大豆油の生産量が減少し、さらには、ウクライナ情勢でヒマワリ油の生産も落ち込むなど、主要な植物油の輸出量が落ち込んでいる」と指摘した上で、「インドネシア政府による決定は、パーム油だけでなく、世界中の植物油の供給に影響を与える」と指摘している(「チャンネル・ニュース・アジア」4月25日)。

グローバル・トレード・アトラスによると、インドネシアの2021年のパーム油(HS1511)輸出量は約2,553万トンで、今回規制の対象となったCPO(HS1511.10)が約249万トン、RBDパーム油(HS1511.90.20)が約754万トン、RBDパームオレイン(HS1511.90.36、1511.90.37、1511.90.39)が約1,274万トンとなっている。この3種類の合計輸出量は2,277万トンと、同国のパーム油輸出量全体の約9割を占める。

(注)RBDパーム油は、CPOを脱酸、脱色、脱臭加工したパーム油。RBDパーム油からオレイン酸を抽出したものがRBDパームオレインとなる。

(上野渉)

(インドネシア)

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