ベネズエラ国内での外貨による取引にブレーキ

(ベネズエラ)

ボゴタ発

2022年05月12日

ベネズエラ政府は2月25日、同日付改正法令6687号を公布し、外貨を用いた商取引に対し大口金融取引税(IGTF)として3%課税することを定めた。3月28日から施行した。税率は暫定的に3%となっているが、同法令では20%まで上げることが可能になっている。

施行の目的は、米ドルでの取引が定着したベネズエラにおいて、通貨ボリバルを使用するためのインセンティブを生むことに加え、税収増も見込む。政府は同改正法令により、税収が5.4%増加すると見込んでいる。

公式な統計はないが現在、国内の個人・法人による商取引の60~70%は外貨で行われ、そのうち65%程度が外貨現金によると推定されている。外貨取引は、地域・商業規模によって異なるが、「特別納税者」と指定される法人・個人への支払いが対象となっており、小売チェーンやスーパーマーケット、レストランの多くが指定されている。税務当局のSENIATがこの指定を行うことになっており、実際は店頭で「特別納税者」かどうかを確認して購入することが一般的に行われている。

なお、3%の課税は、現地通貨ボリバルや仮想通貨ペトロを用いた取引、外国送金の受け取り、海外の銀行から引き落とされるクレジットカードなどを用いた場合は対象外となる。

施行された当初の4月には、徴収に当たり混乱も見られたものの、最近は、商店やレストランなど商業施設でも徴収が徐々に本格化している。全国商業サービス組合(CONSECOMERCIO)は4月21日時点で、同組合加入企業の50%はレジスターのプログラム変更など作業を終え、徴収を行っていると発表した。

なお、銀行監督庁(Sudeban)によると、3月末の施行から1カ月後の個人での商取引におけるボリバル建て電子決済額が21%増加した。

この施策により、ボリバル貨による取引や預金の増加、税収増は見込める一方、ボリバル現金不足の解消も必要なほか、非正規取引が増加するとの指摘もある。何より、外貨取得手段が限られる中、ボリバル貨の安定にどの程度寄与するかが注目される。

写真 外貨での購入時のレシート。左は施行前のもの(ジェトロ撮影)

外貨での購入時のレシート。左は施行前のもの(ジェトロ撮影)

(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)

(ベネズエラ)

ビジネス短信 03da89e1e0f5527f