EU首脳、ウクライナとモルドバの加盟候補国認定に合意、エネルギー市場改革にも言及
(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア)
ブリュッセル発
2022年06月28日
欧州理事会(EU首脳会議)が6月23~24日、ブリュッセルで開催された。欧州理事会はロシアへの非難と、ウクライナに対する支持と経済・軍事支援をあらためて表明。その上で、欧州委員会の意見書(2022年6月20日記事参照)を受けて、ウクライナにEUの加盟候補国の地位を与えることを決定した(注)。
ウクライナによる2月28日のEU加盟申請からわずか4カ月足らずでの加盟候補国認定の合意は、現在停滞しているEU加盟プロセスの中心となっている西バルカン諸国と比べて、異例とも言える速さでの決定だ。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は23日、自身のツイッターで「歴史的合意、歴史的決定」と評しており、ウクライナ支持への象徴的な意味合いが大きいとみられる。実際に加盟交渉を開始するには、ウクライナは司法の独立や腐敗防止の強化策、新興財閥(オリガルヒ)やマネーロンダリング対策の法整備、少数派の保護などを実施した上で、EU理事会(閣僚理事会)で全加盟国の承認を再度受ける必要があるなど、今回の決定はEU加盟の具体的な見通しを示すものではない。
3月に同じく加盟申請をしたモルドバとジョージアに関しても、欧州委の意見書のとおり、モルドバには加盟候補国として認定する一方で、ジョージアに対しては加盟の方向性を認めつつ、加盟候補国の認定を保留した。
また、欧州理事会はクロアチアのユーロ圏加入準備が整ったとする欧州委の報告書(2022年6月7日記事参照)を支持した。これにより、7月にもクロアチアのユーロ導入に向けた法的手続きが完了する予定で、クロアチアは2023年1月1日からユーロを導入することが認められることになる。
欧州委、エネルギー市場改革案を夏の終わりごろに提案すると表明
高騰が続くエネルギー価格の問題に関しては、大きな進展は見られなかった。今回の欧州理事会の総括では、欧州委に対して、エネルギーの輸入価格に上限を設けるなど価格の抑制策の検討をあらためて求めた。また、12の加盟国でロシアからのガス供給が部分的にあるいは全面的に停止されるなど、ロシアによる「ガスの武器化」が進んでいるとして、安価なエネルギーの安定供給に向けた緊急対策を取りまとめるよう、欧州委に新たに求めるにとどまった。一方で、欧州理事会後の記者会見で、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、エネルギー価格の抑制策だけでなく、これまでスペインなど一部の加盟国が求めていたガス価格と電気価格のデカップリング(切り離し、2022年3月29日記事参照)を含めた卸電力市場の現行制度の改革案を検討していることを明らかにした。欧州委はこれまで現行制度の改革には消極的な態度を示していたことから(2021年10月27日記事参照)、大きな方針転換といえる。10月の欧州理事会に向けて、今夏の終わりをめどに新たな提案をまとめるとしている。
(注)EU加盟プロセスと加盟条件などの詳細については、2022年5月19日付地域・分析レポート「ウクライナは、EUに加盟できるのか」を参照。
(吉沼啓介)
(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア)
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