個人情報保護法への対応、日系企業の駆け込み相談が相次ぐ

(タイ)

バンコク発

2022年07月05日

ジェトロは、6月1日から完全施行された2019年個人情報保護法(PDPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて(2022年7月4日記事参照)、企業や団体の対応状況を聞き取り調査した。

多数の日系企業を顧客に抱える大手コンサルティング業A社の担当者は「5月になってから駆け込みでの相談が多い状況だ」と明かす。従前から十分に体制を構築してきた大手企業も多い一方、中小企業では十分に体制が整っていないケースもある。「企業によってはPDPA対応にあてる人的または資金的なリソースも限られるなか、どこまでやるかも含め、一から相談に乗っている」という。

PDPAは、個人を直接/間接的に識別できる情報を対象としている。そのため、A社の担当者によると、「企業向けに製造・販売を行う製造業などで、顧客やサプライヤーが限定される場合、個人情報は量的に限られるため、PDPAへの対応にかかる負担は比較的少ない」という。一方、広く個人向けにビジネスを行う業種では、どうしても負担は大きくなる。例えば、「リテール商品(個人向け小売商品)を扱う金融機関などは、対応が大変な状況」(A社担当者)という。取得した個人情報(名前、連絡先など)の使用目的については、顧客からの許可も必要となるため、他の新商品の営業などもしにくくなっている。

多くの個人顧客を有する日系大手金融機関B社の幹部に聞くと、「顧客からの個人情報取得同意書の用意など、2年前から準備を進めてきた。6月からの施行についてもスムーズに対応できており、同社としては問題になっていない」としつつ、「PDPAへの対応には、それなりにコストがかかっている」と説明する。同社のように、顧客が数万人単位に上るケースでは、一人一人に同意書に署名をもらわなければならず、対応に要する時間や費用も膨大となる。

バンコクに駐在員事務所を構える日本の公的機関Cは、セミナーや商談会などの事業を行っている。Cの担当者は「まだPDPAの細則が明らかになっていないなか、欧州の一般データ保護規則(GDPR)などを参考にしながら対応しているところ」と話す。ウェブサイト構築などは、欧州でのノウハウを活用したり、グローバルでの対応を流用したりすればよいが、「タイにおけるプライバシーポリシー(個人情報取り扱い方針)の策定や、契約書の同意書の要求など、業務にかかる負担は増えている」とする。

Cの担当者によると、「例えば、PDPAの実施前であれば、相手先での契約書のリーガルチェックは数日で済んでいたところ、実施以降は数週間必要となっているケースもある」という。各種フォーマットの統一や、PDPA関連の相談先の選定なども悩みの種になっているようだ。

(北見創)

(タイ)

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