フランス電力(EDF)、97億ユーロで完全国有化へ

(フランス)

パリ発

2022年07月21日

フランス政府は719日、フランス電力(EDF)の株式100%取得に向けて、公開株式買TOB)を実施すると発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますEDFの国有化はエリザベット・ボルヌ首相が76日の施政方針演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで表明していたもの。ブリュノ・ルメール経済・財務・産業デジタル主権相は19日付プレスリリースで「EDFの国有化はフランスのエネルギー自立性を強化し、EDFに大統領が求めた原発(建設再開)計画の実現と再生可能エネルギーの拡大を加速する手段を与えるものだ」とし、政府が大規模な発電プロジェクトの実現に向けてEDFを全面的に支援する方針を確認した。

エマニュエル・マクロン大統領は2月、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて再生可能エネルギーと原子力の2本立てで電力の供給力を増やす方針を示す(2022217日付記事参照)とともに、原子力については次世代EPR(欧州加圧水型炉)を6基(最大で14基)建設する計画を発表していた(大統領府の210日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

政府は既にEDF株の84%を保有する筆頭株主外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだが、今回のTOBにより、保有していない株式15.9%と転換社債(株式へ転換する権利付きの社債)60%を取得する。現在、議会で審議されている2022年の補正予算法案を成立させた上で、9月上旬に金融市場庁(AMF)に申請する予定だ。

TOBの買付価格は112ユーロを予定する。ボルヌ首相がEDFの国有化を発表した7月6日の前日の終値に比べ53%割高となる。転換社債は115.64ユーロで買い取る予定で、政府はTOBの総コストを97億ユーロと見積もっている。

これを受けて、ガブリエル・アタル公会計担当相は7月19日、国営ニュース専門局フランスアンフォのインタビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、EDFの国有化に係る費用は財政赤字をGDP5%に抑える政府目標の範囲内と述べるとともに、国有化によりフランスは原子力推進に巨額の投資が可能になると主張した。

EDFの純負債額は2021年に4298,800万ユーロとなり、前年からほぼ7億ユーロ拡大した(EDF202112月資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同社は2022年の業績見通しについて、政府による電力料金引き上げ抑制措置が同社のEBITA(金利、税金、償却前利益)に与える影響をマイナス102億ユーロ(314日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、腐食が検出された12基を含む原子炉の稼働停止の影響をマイナス185億ユーロ(519日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と試算している。

(山あき)

(フランス)

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