チリ南部の緊急事態宣言、4度目の延長

(チリ)

サンティアゴ発

2022年07月22日

チリ政府は715日付の官報公示により、チリ南部地域に発令している緊急事態宣言を15日間延長した。同宣言は、南部の治安維持を目的に政府が517日から発令しているもので(2022519日記事参照)、今回で4度目の延長となる。2度目以降の延長には国会での承認を必要としており、今回の延長法案は下院(賛成119、反対8、欠席8)と、上院(賛成36、反対0、欠席2)でそれぞれ可決、承認されている。

内務・公安省の発表によれば、緊急事態宣言の発令によって135人のチリ警察と1,200人の軍が対象地域に配備されており、これにより同地域の暴力行為は28%減少している。国会は、政府の要請に賛同するかたちで緊急事態宣言の延長を承認したものの、現政権を構成する党の1つである共産党(PC)所属の下院議員の中には、反対票を投じた議員もいた。同宣言の発令によって政府が発令地域の住民の行動を制限できることや、先住民族との対立の解決に軍や警察などの国家権力を派遣することに否定的な意見を持っているためだ。

緊急事態宣言の代替法案は否決

一方で、憲法改正により、緊急事態宣言の発令を伴わず、政府が公共の場やインフラ(橋、道路、公共サービス、交通機関、空港、変電所、病院など)の安全を保護する目的のもと、軍の配備を可能にする法案が国会で審議されていた。当初、同法案は、国会で可決に至ったものの、ガブリエル・ボリッチ大統領によって大統領権限である拒否権(Veto)が行使され、軍の最高指揮官の任命などに関して、内容の一部に修正が加えられた。この修正案に対して、上下両院で新たに投票が行われ、上院では可決(賛成36、反対1、欠席3)されたものの、下院では否決(賛成61、反対69、欠席17)された。そのため、政府が今後も南部地域への軍の派遣を継続する場合には、緊急事態宣言の延長という国会での承認を伴うプロセスを経る必要性が生じている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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