双日、次世代素材グラフェン事業をシンガポール起点に展開へ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年07月28日

双日本社:東京都千代田区の金田野人課長は719日、ジェトロのインタビューで、次世代の炭素素材「グラフェン」の新たな市場について、シンガポールを起点に世界へ開拓していく方針を明らかにした。同社は20216月、シンガポールでグラフェンを製造・販売するスタートアップの2Dマテリアル(2DM)に出資した。

グラフェンは、炭素原子が網目状に結びついた薄いシート状の2次元素材だ。同素材を塗料や電池などに添加すると、導電性や耐久性が向上するという特性から、「究極のナノ材料」として注目されている。ただし、グラフェンは現段階では一部の分野を除いて本格的な商業化に至っていない。双日が出資した2DMは、シンガポール国立大学(NUS)先端2次元素材研究センターからスピンアウトした20157月創業のスタートアップ。同社には、グラフェン研究で2010年にノーベル物理学賞を受賞した2人のうち1人のコンスタンチン・ノボセロフ教授が技術アドバイザーとして加わっている。

双日はグラフェンの商業化に当たり、主に(1)二次電池の導電助剤としての利用のほか、(2)コンクリート・アスファルトと、(3)塗料・コーティング剤への添加を検討している。双日の安藤智史専門部長は「例えば海上構造物などに使えば耐久性が上がり、インフラ再投資までの期間を延ばす効果がある」と指摘。今後は「産業界の課題を見据えた上で(グラフェンの)市場を創出していく」との考えを示した。

安藤専門部長は2DMへの出資に際し、競合する他の60社の中から調査した結果、2DMの製品が最もグラフェンの含有量が高かったと述べた。また、2DMの製法は比較的環境への負荷が低いほか、製造の過程で生じる汚染物がリサイクルされている利点があるという。2DMは現在、シンガポールに年産12トンのグラフェンの粉末を製造できる工場を保有する。同工場は今後、敷地内の製造能力を3倍の36トンまで拡大することも可能だ。双日は今後、シンガポールの同工場で生産したグラフェンの需要を開拓することになる。さらに、安藤専門部長は「将来、グラフェンの需要家に近い所で使いやすい形に加工する新たな工場を展開する」可能性も指摘した。

(本田智津絵)

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