世界銀行、ミャンマーの2021/2022年度の経済成長率を3%に上方修正
(ミャンマー)
アジア大洋州課
2022年08月02日
世界銀行は7月21日、「ミャンマー経済モニター」(Myanmar Economic Monitor July 2022)を公開した。2021/2022年度(2021年10月~2022年9月)の実質GDP成長率が前年度比3%になるとの予測を発表、1月時点の予測1%(2022年2月1日記事参照)から引き上げた。
ミャンマー経済の実質GDP成長率は、前年度のマイナス18%からプラスに転じたものの、新型コロナウイルス感染拡大前の水準には及ばす、今年度の予測も3%と低迷が続く(注1)。同報告によると、低迷の要因は、ロシアのウクライナ軍事侵攻の影響による輸入品や消費財の価格高騰、ミャンマー国内の紛争激化、停電、物流や金融セクターの継続的な混乱などだ。また、貿易ライセンス取得にかかる企業の負担増大や、為替の変動相場制からの変更(注2)、外貨の強制兌換(だかん)など最近の政策転換は原材料を含む主要輸入品の不足を招き、輸出業者の足かせとなるなど、企業にとってさらなる試練となっている。規制の例外措置の発表や撤回も相次ぎ、企業にとって不確実性は高まっている。
一方で、同報告では、経済全体が逆風にさらされる中、一部業種は過去12カ月間に安定または回復していると指摘している。製造業の一部は前年度よりも高い割合で稼働し、輸出も回復している。また、建設活動も前年の長い休止期間後に幾つかのプロジェクトが再開されており、今年度予想される緩やかな成長を後押ししているとした。
経済活動水準の回復は当分見込めず
世界銀行は、ミャンマー全体の今後の成長見通しは明るくなく、大きなリスクにさらされているとみる。食料や燃料、その他の輸入品の国内価格は短中期的に上昇し続け、生産と消費の両方を制約する可能性がある。また、国際収支悪化の懸念も高まっており、ドル不足により、燃料を含む複数の輸入製品の入手が既に制限されている。さらに、国内の多くの地域で起きている紛争は引き続き生産活動を制約することが予想され、その結果、他の東アジア・大洋州地域とは対照的に、新型コロナウイルス禍以前の経済活動水準に戻る可能性は当分ないとした。また、貿易と為替の政策転換により、過去10年間のミャンマーの高成長の主要な原動力だった開放性と自由化の大部分が失われている。このような政策転換の傾向が続く限り、投資家の信頼とビジネス環境はさらに損なわれ、ミャンマーの長期的な潜在成長力が制約されることが予想されるとした。
(注1)世界銀行によると、ミャンマーの実質GDP成長率は、2019/2020年度が3.2%、2018/2019年度が6.8%だった。
(注2)ミャンマーは現在、管理変動相場制となっており、中央銀行は銀行や両替商を対象とした為替レートに関して、中央銀行が出す参考レートから上下0.5%幅以内での取引を義務付けている(2021年11月17日記事参照)。2022年7月27日時点の参考レートは1ドル1850チャット。
(アジア大洋州課)
(ミャンマー)
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