上海の封鎖管理で8割の台湾企業が受注・利益減少

(台湾、中国)

中国北アジア課

2022年09月08日

台湾の製造業関連団体を束ねる「中華民国全国工業総会(以下、工総)」は91日、2022年の中国における新型コロナウイルス感染症の拡大と封鎖管理が台湾企業に与えた影響に関する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。同報告書は、華東地域に投資を行う台湾企業86社に対して、6130日に実施したアンケート調査結果をまとめたもの。

同報告書によれば、上海などの新型コロナ感染拡大および封鎖管理によって、受注が減少したと回答した企業は79.1%、「増加した」と「変化なし」はそれぞれ12.8%と8.1%で、約8割の企業が負の影響を受けたことが分かった。また、新型コロナが企業利益に与えた影響を尋ねたところ、利益が減少したと回答した企業は79.1%だった。工総は、新型コロナによって中国市場全体の消費力が低下し、とりわけ携帯電話などの消費者向け電子産品市場が低迷したことで、サプライチェーンの川上に当たる部品の需要が減少し、受注減につながったと分析した。

さらに、3月末から6月にかけて、上海~昆山一帯で実施された封鎖管理により、サプライチェーンが停止し、川上・川下企業の受注量に影響が及んだこと、この間に海外の顧客が別の業者に発注し、さらに封鎖解除後も顧客が商品の安定供給を懸念したことから受注が回復せず、長期的な受注減に至ったことを指摘した。

新型コロナによる工場の操業停止や物流の混乱については、76.7%の企業が「サプライチェーン管理の難度が上昇した」と回答した。また、物流コスト上昇が経営に与えた影響については「影響が大きい」が43.0%、「部分的に影響」が40.7%だった。封鎖管理が経営に与えた影響については、「影響が大きい」が55.8%、「部分的に影響」が34.8%と、上位2項目で9割以上を占めた。

今後の展望については、2022年の中国における事業について、受注減少を見込む企業は46.5%だった。工総は、新型コロナによる封鎖管理が2022年通年の受注に与える影響は限定的としつつも、中国経済の全体的な後退が需要に影響を与え、2022年通年の受注状況は楽観視できない状態にある、との見方を示した。また、利益については、減少を見込む企業が59.3%と6割近くに達した。物流コストや原材料価格の高騰が利益を圧迫するとの懸念がうかがわれた。

投資については、66.3%の企業が中国以外の地域への投資を増加すると回答した。ただし、中国での事業から撤退すると回答した企業は12.8%、サプライチェーンを中国から移管すると回答した企業は9.3%にとどまった。工総は、多くの台湾企業が中国市場の長期的な成長や生産条件、サプライチェーンの規模に魅力を感じており、中国事業からの撤退は検討しておらず、リスク分散として台湾や東南アジアに生産ラインを設置しようとしていることが明らかになったと指摘した。なお、中国以外の地域への投資を増加すると回答した企業に、主な投資先を複数回答で尋ねたところ、台湾(52.6%)、ベトナム(36.8%)、タイ(14.0%)、米国(14.0%)などが上位に挙げられた。

(柏瀬あすか)

(台湾、中国)

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