米USTR、IPEF貿易分野の交渉目標を公表

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

ニューヨーク発

2022年09月29日

米国通商代表部(USTR)は9月23日、米国が主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の交渉分野のうち「貿易」の柱の交渉目標を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

IPEFについては、9月初頭にロサンゼルスで初の対面での閣僚会合が開催され、(1)貿易、(2)サプライチェーン、(3)クリーン経済、(4)公正な経済の4つの柱について交渉目標を設定した(2022年9月12日記事参照)。その際、貿易の柱に関しては、参加国間で労働や環境、デジタル経済、貿易の円滑化、農業、競争政策、透明性と良き規制慣行、包摂性、技術支援と経済的協力を取り上げるとしていた。USTRが今回発表した交渉目標はあくまで米国の指針を定めたものだが、次の3点に注力するとしている。

  1. 強靭(きょうじん)性:新型コロナウイルス感染拡大などによる混乱を経て、強靭なサプライチェーンの重要性が認識された。その実現には、貿易の円滑化に関する強力な条項、透明性の向上や広く受け入れられる良き規制慣行が必要だ。また、その基盤的要素として、世界市場でのモノとサービスの価格競争力が確保されていなければならない。だからこそ、IPEFでも競争政策を交渉分野に含んでいる。
  2. 包摂性:バイデン米政権の通商政策の礎石は、労働者の権利に関する高水準な約束を確立し、米国と世界の労働者に利益をもたらすという信念だ。デジタル経済では、中小企業が地域の拡大する電子商取引分野から恩恵を受けられるよう、高水準のルールを追求する。IPEFには発展度合いが異なる国々が含まれていることを認識し、全加盟国がこの枠組みから最大の恩恵を享受できる合意内容を目指すとともに、義務を履行できるよう支援していく。
  3. 持続可能性:バイデン政権は、通商が繁栄の促進のみならず、環境保護、気候危機への対応、より持続可能な経済の構築にとって不可欠な手段だと理解している。IPEFを通じて、地球の保全や食料安全保障、農家が成功できるような持続可能な世界規模の農業システムを可能とするため、農業問題に関してさまざまな合意を追求する。

USTRは今後、利害関係者や議会との議論を深め、交渉の進捗について公に情報を発信していくとしている。米国政府ではIPEFの4つの柱のうち、USTRが貿易を担当することになっており、そのほか3つの柱は商務省が担当する。商務省は現時点で、3つの柱に関する米国の交渉目標を公表していない。なお、貿易の柱には、インドを除く全てのIPEF加盟国が参加することになっている。

(磯部真一)

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

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