2022年GDP成長率予測を2.0%に下方修正、エネルギー情勢により減速

(スイス)

ジュネーブ発

2022年09月27日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は920日、2022年の実質GDP成長率予測(スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだ数値、注)を2.0%と発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、添付資料表参照)。エネルギーの供給制約と価格高騰による景気減速を予測し、前回予測(6月)(2022年6月17日記事参照)から0.6ポイント下方修正した。

スイス経済は2022年第2四半期(46月)に予想どおりの回復を続けた。公衆衛生対策の解除によりサービス部門が大幅に回復、娯楽・宿泊・飲食へ向かった個人消費が堅調に伸びた。一方で、現在の経済指標は複雑な様相を呈している。スイスのインフレ率は国際水準と比べて低く、良好な雇用率は個人消費を下支えし、国内経済の回復基調が続く見通しだ。しかし、国際経済情勢は厳しく、特にスイスの主要貿易相手国であるユーロ圏、米国、中国の経済成長の減速が予想されており、スイスの輸出産業が影響を受ける可能性が高い。こうした理由からSECOは、スイスの経済成長が短期的に勢いを失うと予測。国内経済の先行きは、世界経済とエネルギー情勢に大きく左右されるとした。ロシアからの天然ガス供給の急減とフランスの原子力発電所の稼働率低下により、欧州ではエネルギー供給不足のリスクが高まっている。一方で、欧州のガス貯蔵施設における備蓄の拡充は迅速に進んでおり、家計や企業による省エネ対策により、今後数カ月間のエネルギー消費量は大幅に減少する見通しだ。

今回の下方修正は、広範囲にわたる生産停止となるような深刻なエネルギー危機が発生しないことを前提としている。SECOは前回予測からの大幅な下方修正となった理由として、2021年の実質GDP成長率の実績が予測を上回ったことも一因だとした。

SECO2023年のGDP成長率予測についても、1.1%(スポーツイベント調整後、6月時点の予測:1.9%)と大幅に引き下げた。インフレ率上昇と金融引き締めを背景に外需が減速すると、スイスの輸出部門はマイナスの影響を受ける。エネルギー価格の高騰により国内のインフレ圧力も高まることから、SECO2022年の消費者物価指数上昇率を3.0%、2023年を2.3%と上方修正した。さらに、内需の落ち込みと景気減速にともない、第4四半期(1012月)には失業率が上昇すると予測、2022年平均失業率を2.2%、2023年を2.3%と上方修正した。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年マイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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