米国で鉄道ストライキ回避、全組合が暫定合意を締結、バイデン政権が仲介主導

(米国)

ロサンゼルス発

2022年09月16日

米国では、鉄道会社と従業員の労働組合の間で労使交渉が膠着(こうちゃく)していたが、全米の貨物鉄道会社を代表して交渉を担う全米輸送会社会議委員会(NCCC)が9月15日未明、これまで合意に達していなかった3組合と暫定合意を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、交渉に参加していた全12組合が鉄道会社側と暫定的な合意を締結したことになり、9月16日にも発生が懸念されていたストライキなどの不測の事態はいったん回避された。

9月13日までに9組合が先行して暫定的な合意に達する中、NCCCと、米国2大鉄道組合の機関車電車工同盟(BLET)と板金・航空・鉄道・運輸組合輸送部門(SMART-TD)は、労働条件をめぐり意見の隔たりがあり、交渉が難航していた(2022年9月15日記事参照)。こうした中、鉄道会社と労働組合は、9月14日からマーティ・ウォルシュ労働長官と20時間にわたり協議を続け、15日未明に合意に達した。複数の報道によれば、ジョー・バイデン大統領自らも交渉官と協議するなど、交渉を後押したもよう。BLETSMART-TDは、15日に発表した共同声明の中でPEBの勧告を上回る条件を獲得したことに言及しており、最終的に鉄道会社側が一定の譲歩をしたとみられる。

ユニオン・パシフィック鉄道やBNSF鉄道など主要貨物鉄道会社は、鉄道サービス停止の懸念が高まる中、危険物など一部商品の輸送を中止する緊急措置を顧客に通知していたが、今回の合意を受けて、当該措置を解除した。貨物鉄道会社から線路を借りて運行している旅客鉄道会社のアムトラックは、15日から長距離を移動する列車の運行停止措置を計画していたが、当該措置を解除し、通常運行に戻している。

今回の合意を受けて、バイデン大統領は、労働組合と鉄道会社が誠実に交渉し、暫定合意に達したことに感謝を示した上で、「今回の暫定合意は、重要な鉄道システムが機能し続け、経済の混乱を回避する」と意義を強調外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。全米小売業協会(NRF)は声明を発表し、「高いインフレと経済の不確実性が消費者の予算を圧迫し、ビジネスの回復力が危機に瀕している時に、影響を受けるだろう企業や消費者を代表して、バイデン政権が介入したことに感謝する」と述べた。

なお、今回の暫定合意は、各組合の組合員による承認をもって正式に発効する。今後は各組合で承認プロセスが進められるが、既に国際機械工航空宇宙労働組合(IAM、組合員数4,900人以上)の組合員は暫定合意を否決しているほか、一部の組合員から不満の声が出ていると指摘する報道もあり、円滑に進むかどうかは不透明だ。

(永田光)

(米国)

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