科学に基づいたスタートアップが主導する未来、Hello Tomorrow Japan Challenge 2022開催

日系ディープテックスタートアップを対象としたピッチコンテスト「Japan Challenge」がHello Tomorrow Japanの主催で、9月13日に東京で開催された。登壇したスタートアップ13社は事前に実施された書面審査を勝ち抜いたファイナリストで、各社は英語で独自技術やビジネスモデルの魅力についてピッチを行った。

優勝者は、東京大学発の宇宙スタートアップのペールブルーとなった。同社は、従来の衛星用エンジンで用いる高圧ガスや有毒な推進剤に代えて、安全無毒の「水」を推進剤とした小型衛星用エンジン技術を提供することで、環境に優しく、持続可能な宇宙開発を目指している。今回のコンテストに優勝したことで、同社は2023年3月にフランスで開催されるHello Tomorrow主催の世界大会「Global Summit」への参加資格とパリ行きの航空券を獲得し、世界中の投資家などが集う「Investor Day」にも招待される。

また、安価なカーボン材料などを原料にしたレアメタル代替技術を持つAZUL Energyと、血液脳関門を越えて薬物を脳内に送達できる技術を活用したプラットフォームを開発したブレイゾン・セラピューティクスは、Hello Tomorrow Asia Pacific主催のアジア大会「Asia Pacific Summit」への参加資格を獲得し、10月5日にシンガポールでピッチを行う。

近年、世界的にディープテックスタートアップへの注目が集まっており、日本でもディープテックをはじめとしたスタートアップの海外展開が増加している。今回のコンテストでは、スタートアップによるピッチのほか、国内外で活躍する有識者が登壇し、起業や事業拡大に必要なポイントについて紹介された。

海外市場で資金調達の経験を持つGlobal Hands-On VCの安永謙氏は「日本市場の成長率が乏しいことから、日本にとどまると、バリュエーション（企業価値評価）を高めづらくなる」と指摘し、海外進出の重要性を強調した。

また、米ディープテック特化型ベンチャー・キャピタル（VC）のBlue Bear Venturesのイルファン・ビサンジェ氏は「優れた科学者はリーダーシップと忍耐力、コーチング能力を兼ね備えることで、良き創業者になれる」と述べ、今後高成長が期待されるディープテックスタートアップに対して社会全体の未来を切り開いていくようエールを送った。

ジェトロは今回、Hello Tomorrow Japanのエコシステムパートナーとして参画した。今後、フランス市場をはじめとした海外市場参入を目指す日系スタートアップの支援を行っていく。

（林ユリエ、加藤優花）