米エクソンモービル、「サハリン1」から完全撤退

(米国、ロシア、日本、インド)

ヒューストン発

2022年10月19日

米国石油大手エクソンモービル(本社:テキサス州アービング)がオペレーターを務めるロシア極東サハリン州での天然ガス・原油採掘事業「サハリン1」について、10月17日、同社が完全撤退したと複数の米国メディアが報じた。

エクソンモービルはロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年3月にサハリン1の操業停止およびロシアでの新規投資停止を発表し(2022年3月2日記事参照)、サハリン1からの撤退に向け、同社が保有する権益の30%を、譲渡先を明示しないかたちで譲渡する手続きを進めていた(2022年8月8日記事参照)。一方で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、サハリン1に関して、米国など「非友好国」の企業が株式売却などを行うことを2022年12月31日まで禁止する大統領令に署名したことで(2022年8月8日記事参照)、エクソンモービルの撤退および権益譲渡手続きが不透明になっていた(2022年8月31日記事参照)。

エクソンモービルの広報担当者は、メディアからの取材に対し、「ロシア政府はサハリン1における当社の権益を一方的に打ち切り、プロジェクトはロシアの事業者に移管された」と述べた。同担当者は、エクソンモービルが資産の補償を受けたかどうかは明らかにしなかったが、同社は国際法と生産分与契約の下で法的権利を留保し、補償など救済措置を追求する予定だとしている(CBSニュース10月17日)。

サハリン1事業には、エクソンモービルのほか、ロシアの石油掘削大手ロスネフチや日本の官民が出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)、インド石油天然ガス公社(ONGC)などが参画している。

米国企業によるロシアでの石油・ガス事業については、米国石油サービス大手ベーカー・ヒューズ(本社:テキサス州ヒューストン)が8月1日、ロシアでの油田サービス事業を現地経営陣に売却する契約に調印したと発表した(2022年8月2日記事参照)。同じくヒューストンに本社のある石油サービス大手ハリバートンは9月8日、ロシア事業の現地経営陣への売却を完了したと発表した(2022年9月13日記事参照)。

(沖本憲司)

(米国、ロシア、日本、インド)

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