湯浅監督作品「犬王」、政府補助金活用で海外展開進む

(ルーマニア、日本)

ブカレスト発

2022年10月17日

日本の映画製作・配給会社のアスミック・エースが国内で配給する劇場用アニメ映画「犬王」(いぬおう)がルーマニアの第17ブカレスト国際アニメーション映画祭外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます10716日開催)の湯浅政明監督特集上映外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとして1010日、ブカレスト市内の名画座で英語とルーマニア語字幕で上映された。上映前に湯浅氏が舞台あいさつした。上映後の質疑応答コーナーでは、観客から登場人物のアクションや、映像、作画技術、ストーリーの関係など多くの質問があった。湯浅氏は、善悪とステレオタイプの観念や、現代に見聞きしている物事は実は遠い過去にもあったのかもしれないという想像力を伝えたかったと語った。この映画祭期間中、犬王を含め同氏監督の5作品が上映されている。

湯浅氏代表作の1つ「夜明け告げるルーのうた」は20176月、アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)で長編部門グランプリのクリスタル賞を受賞。日本作品の同賞受賞は宮崎駿監督(1993年)、高畑勲監督(1995の作品に続いて22年ぶりの快挙となったこともあり、ブカレストの映画関係者の中でも湯浅氏の知名度は高い。

室町時代を舞台にロックンロールを繰り広げる「犬王」は、日本のオリックスが出資した香港企業の子会社、欧樺文化伝播(上海)との共同製作で、プリプロダクション段階で文化庁国際共同製作支援事業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの令和2年度支援作品として採択された。20219月の第78回ベネチア国際映画祭(イタリア)に出品し、ワールドプレミアとして上映するのを機に、経済産業省のコンテンツ海外展開促進・基盤強化事業費補助金(J-LOD外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに採択され、作品のローカライズとプロモーション費用が補助された。

20226月のアヌシー国際アニメーション映画祭(2022年7月1記事参照)出品時には公益財団法人「ユニジャパン」の海外映画祭出品支援事業に採択された。7月に第26回ファンタジア国際映画祭(カナダ)で長編アニメ―ション作品のグランプリに当たる今敏(こんさとし)賞を受賞、2カ月後にはフューチャーフィルム映画祭(イタリア)で最優秀長編映画賞を受賞している。

アスミック・エースの竹内文恵アニメ事業部長プロデューサーはジェトロに対し、政府の支援は海外展開に役立っており、国際映画祭コンペで受賞する機会が増え、海外配給先の候補との商談にも弾みがつくと話した。湯浅監督とアスミック・エースは10月にブカレストからシッチェス・カタロニア国際映画祭外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(スペイン)、スコットランド・ラブズ・アニメーション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英国)に赴く予定で、11月にはジュネーブ国際映画祭外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのコンペを控えている。

写真 映画祭で観客の質問に答える湯浅政明監督(ジェトロ撮影)

映画祭で観客の質問に答える湯浅政明監督(ジェトロ撮影)

(西澤成世)

(ルーマニア、日本)

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