国連安全保障理事会でアフリカのテロ対策について議論

(アフリカ、ガーナ、ブルキナファソ、マリ、ニジェール)

中東アフリカ課

2022年11月22日

国連安全保障理事会は1110日、アフリカのテロ対策に関するハイレベル討論を開催した。

国際シンクタンクの経済平和研究所によると、2021年のテロによる死者数は世界全体で7,142人となり、アフリカはその48%を占める3,461人だった。特にブルキナファソ、コンゴ民主共和国、マリ、ニジェールの4カ国で増加が著しく、サヘル地域ではイスラム過激派組織が急速に勢力を増している。テロの活発化を背景に、ここ数年でブルキナファソやマリなどにおいて連鎖的にクーデターが発生し、情勢悪化に拍車をかけている。

討論を主催したガーナのアクフォ=アド大統領は、アフリカでは2022年は16月の間だけでテロの犠牲者数は5,412人にも上ったと述べ、既に西アフリカではサヘル地域のみならず、ギニア湾沿岸まで勢力を広げ、海賊グループとの関係までつなげようという動きが出てきていると危機感を露わにした。一方、フランスのマクロン大統領は119日、西アフリカにおける同国の対テロ作戦の正式な終了を発表した。マリでは、ロシアの民間軍事会社ワグネルがフランス軍に代わり、イスラム過激派の掃討作戦を展開しているとされ、西側諸国は警戒を強めている。

ムーサ・ファキ・アフリカ連合(AU)委員長は「新たな脅威に伝統的な手法は通用しなくなっている」とテロ対策の戦略の見直しを訴えた。アミーナ・モハメッド国連副事務総長は、アフリカのテロは国際社会の問題だと強調し、国際社会が協調して、テロの温床となりうる不安定を生まないよう貧困や不平等などの解消による予防的措置と軍事作戦の両面でアフリカを支援していくべきと主張した。軍事作戦については、チャド盆地における共同軍事作戦や、G5サヘル共同軍など、アフリカ主導で進められる作戦が重要な役割を果たしているとして、AUなどのアフリカ主導の平和維持活動を支援していく方向性を示した。

討論では、英国の代表などがロシアのワグネルの介入に対し「無視できない」と非難したが、ロシアの代表は「各国が選択すべき問題」と反論。また、中国の代表がテロ対策は重要だが、各国の主権は尊重されるべきで、ゆえにスーダンや南スーダン、コンゴ民主共和国への武器禁輸措置は負の効果しかもたらさないとして、制裁の撤廃を主張した。

202310月には、アフリカにおけるテロ対策をテーマとしたサミットがナイジェリアで開催される予定となっている。

(佐藤丈治)

(アフリカ、ガーナ、ブルキナファソ、マリ、ニジェール)

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