米商務省、中国のAI半導体関連企業などを輸出管理対象に追加

(米国、中国、日本)

ニューヨーク発

2022年12月16日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は12月15日、中国と日本に拠点を置く中国の36の事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載すると公表した。正式には12月19日の官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするが、EL掲載の効果は12月16日から有効となる。

ELとは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。今回追加した36事業体の内訳は中国拠点が35、日本拠点が1となっているが、日本拠点は中国半導体大手の長江メモリ(YMTC、長江存儲科技)の日本法人となっており、実質的には全て中国の企業・研究機関となっている。各事業体のEL掲載の理由は主に、中国軍の現代化への支援、EL掲載済み事業体にEAR対象製品を移転させるリスク、米国製品のイランへの違法な輸出のほう助(軍用無人航空機の生産などのため)、中国・新疆ウイグル自治区での人権侵害への加担、イラン革命防衛隊による米国製品調達の支援に分かれている。

このうち、中科寒武紀科技(カンブリコン)の関連10拠点を含む21の事業体については、人工知能(AI)半導体の研究・開発・製造および販売に関する主要な役割を果たしており、中国の政府機関、軍、防衛産業と密接な関係を有しているとして、厳格な規制を科している。具体的には、BISが10月7日に公表した中国向けに強化した先端半導体の輸出管理規則を適用する(2022年10月11日記事参照)。つまり、BISがEAR734.9条(e)(2)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで指定した要件に合致する製品に関しては、米国外で生産された製品でも、米国製のソフトウエア・技術を用いている場合、これら事業体に輸出などする場合は、BISの事前許可が必要となる。ただし、先端半導体関連製品を含む全てのEAR対象製品について、許可申請をしても原則として不許可の扱いになるとしている。カンブリコンについては、米国の有識者からも以前から、中国軍への関与があるにもかかわらずELに掲載されていないと指摘されていた。また、日本法人を含めてELに今回掲載した長江メモリは、米アップルが同社製半導体のiPhoneへの搭載計画を明らかにした際、米連邦議員が国家情報長官に、米国の安全保障にもたらすリスクを分析・検証するよう求めるなど、警戒されていた(2022年9月27日記事参照)。なお、長江メモリはAI半導体関連の21事業体に科した厳格な規制の対象ではない。既にEL掲載済みの華為技術(ファーウェイ)、ハイクビジョンなどへの規制製品の移転リスクが掲載理由となっている。

(磯部真一)

(米国、中国、日本)

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