2023年の大統領・議会選に注目、経済は減速の予測

(トルコ)

イスタンブール発

2022年12月27日

2023年のトルコ経済では、同年6月に予定されている大統領選挙と議会選挙に向けた財政出動が大きな要素といえる。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、高インフレが続く中、202212月に実施した最低賃金の大幅引き上げや社会住宅プロジェクト、低所得層への家族支援、年金支給問題の解決を発表するなど、支持率回復に向けた施策を提示している。

外交面では、エルドアン大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻への仲介姿勢を堅持し、テロ対策にも積極的に取り組んでいる。同時に、ロシアの影響力が後退した中央アジアで存在感を示している。具体的には、ウクライナ情勢を受け、ロシア経由で極東と欧州をつなぐ陸上ルートが実質的に閉鎖されたことで注目が集まっている中国と欧州をつなぐ物流ルート「中央回廊」(2022年8月18日記事参照)のハブとしての立ち位置を築こうとしている。また、ロシア、中央アジアからのエネルギーハブとしても、主導者としての立ち位置を確保しようとしている。202111月に、それまでトルコ系民族(テュルク)の歴史、文化的つながりだった「テュルク評議会」を「テュルク諸国機構」に改組し、経済協力関係にまで拡大させたこと(2022年11月21日記事参照)は、この動きを後押ししている。特にエネルギービジネスに関しては、再生可能エネルギー関連を含めた活発な動きが期待される。

トルコの経済成長について、OECD外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2023年から2024年にかけて平均で前年比約3%に減速すると予測している。外需の弱まりと、ウクライナ情勢をはじめとした根強い地政学的な不確実性が投資を圧迫し、輸出の伸びを制限すると同時に、高インフレの継続が個人消費の伸びを抑制するとしている。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴うエネルギー供給問題は、欧州の景気回復を遅らせるだけでなく、ロシアへの天然ガス依存の高いトルコの経常収支やインフレにも悪影響を及ぼす可能性が懸念される。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、このようなマクロ経済の不均衡拡大と、予測困難な政府のマクロプルーデンスはビジネスコストを拡大させるという。

(中島敏博)

(トルコ)

ビジネス短信 8324addf2a21e781