カナダ進出企業の主な課題は賃金引き上げや従業員確保、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(北米編)

(カナダ、日本)

米州課

2022年12月28日

ジェトロが2022年9月に実施したアンケート調査(注1)「2022年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」では、経営上の課題として雇用・労務面の課題を挙げる企業が多くみられた。また、それらへの対応を進める企業の割合も増加していることが分かった。

調査結果によると、カナダ進出日系企業にとって経営上特に課題となっている事項には、「従業員の賃金上昇」が61.8%と最も多かった。次いで「従業員(一般社員)の確保」(47.3%)、「物流コストの上昇」(46.6%)、「調達コストの上昇」(45.8%)と続き、これら項目についても、4割を超える企業が課題として挙げた。具体的な課題としては、商品供給量の低下や安定性の喪失、人材の雇用や育成などが挙がった(注2)。

これら経営上の課題への対応策では、「賃金の引き上げ」(55.5%)が筆頭に挙がり、「人件費以外の経費削減」(41.8%)、「競合商品との差別化」(39.1%)が続いた。「賃金の引き上げ」を回答した割合は前年(34.7%)から20.8ポイント増加し、「人件費以外の経費削減」も前年(26.3%)から15.5ポイント増加した。雇用の逼迫により一般社員の雇用が困難になる中で、インフレの影響も相まって、賃金の引き上げや人件費以外の経費削減といった取り組みをせざるを得ない状況だったことがうかがえる。

賃金の引き上げの動きは、賃金水準の変化からも見て取れる。社員の平均賃金について、職種別にきいたところ、基本給(月額)および年間実負担額の中央値はいずれの職種でも増加した(添付資料1、資料2参照)。また、職能や業績など個人の能力に左右される給与を除いた、ベースとなる給与の昇給率の中央値についても、2022年度と2023年度でともに3.0%と、米国の水準(2022年:4.0%、2023年:3.5%)を下回るものの、例年度よりも高い値となっている。

(注1)調査実施期間は9月8~30日(日本時間)。調査対象は在カナダ日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資や間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業と日本企業の支店の計184社。有効回答数は138社(有効回答率75.0%)。調査は原則として年1回実施しており、カナダでは1989年以降これが33回目。

(注2)サプライチェーンの見直しに関する調査結果は2022年12月26日記事参照

(滝本慎一郎)

(カナダ、日本)

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