世界銀行、タイの2023年GDP成長率予測を下方修正

(タイ)

バンコク発

2022年12月23日

世界銀行は1214日に「タイ経済モニター(2022年12月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、タイの2022年と2023年のGDP成長率がそれぞれ3.4%、3.6%になると予測した。2023年のGDP成長率については6月の予測(4.3%)から0.7パーセントポイント下方修正し、予想以上に急速な世界需要の弱まりを反映した。

同レポートでは、5月からの経済活動の再開や、当局による生活費の上昇圧力の軽減策が景気回復を後押ししたとした。特に第3四半期(79月)のGDP成長率は、個人消費の復活や観光業の回復により4.5%に加速したと分析。足元では、世界的な景気の減速を受けて輸出が顕著に減速しているとし、物品輸出は2023年にマイナス2.1%と、2022年の8.1%(見込み)から急落すると予測した。

また、新型コロナウイルス対策に伴う財政支出により、家計への影響は大幅に緩和されてきた。しかし、インフレが高まる中で救済措置を段階的に終了していることから、2022年の貧困率は6.6%(2021年は6.3%)に上昇するとみている。そのため、より的を絞った効率的な社会的支援策を導入しなければ、エネルギー価格の再上昇などの影響により、財政的な余地(注)をさらに失う可能性があるとしている。

一方、世界銀行タイ担当シニアエコノミストのキアティポン・アリヤプラヤー氏は「このような状況は、財政支出の質や配分の改善や構造的に低い歳入の引き上げにつながる構造改革を行う原動力となる」との見方も示した。

レポートでは、低所得者の雇用と収入の機会を改善するとともに、高齢者、障害者、極貧層を含む最も脆弱(ぜいじゃく)な層に対する社会支援に適切な支出が可能となるよう、財政的な余地を確保することを提言している。また、長期的な成長と人材開発を促進するため、必要なインフラや人的資本へ投資することも、持続可能な貧困の削減を達成するために重要とした。

(注)2022財政年度(202110月~20229月)のタイの財政赤字額は7,000億バーツ(約26,600億円、1バーツ=約3.8円)、20229月末時点の公的債務残高は103,739億バーツとなっており、いずれも新型コロナ禍前より増額となっている。

(藤田豊)

(タイ)

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