欧州委員会、ハンガリーへのEU予算の一時停止措置適用の提案を維持、復興計画は条件付きで承認へ

(ハンガリー、EU)

ブダペスト発

2022年12月02日

欧州委員会は11月30日、「法の支配」の原則に違反したEU加盟国に対するEU予算の執行の一時停止を可能にする条件設定規則(注)のハンガリーへの適用手続きに関する評価と、EUの「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」からの予算執行に関するハンガリーの復興レジリエンス計画(以下、復興計画)の審査完了について発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州委は4月27日に条件設定規則に基づき、ハンガリーへのEU予算執行の一時停止措置を発動するための承認手続きを開始。その後、欧州委とハンガリー政府は協議を重ね、両者は9月、ハンガリーが提案した17項目の是正措置を11月19日までに実施することで合意していた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回、欧州委は「必要な17項目の是正措置の実施が十分でない」と評価し、ハンガリーに対する予算の一時停止措置の承認手続きを進め、9月にEU理事会(閣僚理事会)へ提案していたとおり、結束政策に基づくEUからの資金75億ユーロを凍結することが適切だとあらためて判断した。

また、RRFについては、ハンガリーは復興計画を2021年5月に欧州委に提出していた(2021年5月21日記事参照)。ハンガリーの復興計画は総額58億ユーロの補助金で、今後、RRFからの資金拠出を受けるためには、復興計画に沿った必要条件を満たす必要がある。これらの条件は「スーパーマイルストーン」と呼ばれる改革措置27項目で、条件設定規則の適用に対応するための17項目の是正措置に加え、司法の独立性の確保のための司法改革に関する4項目、EU資金の使途の厳格な管理のための2項目などが含まれている。

今回の欧州委による、条件設定規則に基づくハンガリーへの予算執行の一時停止措置の適用に関する評価と、ハンガリーの復興計画の審査完了を受けて、今後、EU理事会での承認手続きがそれぞれ行われる。予算執行の一時停止措置の発動については、EU理事会は12月19日までに決定する予定。また、ハンガリーへの復興計画の承認については、EU理事会は4週間以内に採択することになる。

ハンガリーは2023年3月31日までにEUの定める条件を満たす司法改革の完了を約束しており、現地報道によれば、EUの資金がハンガリーに最適に到着するのは最短でも2023年夏だという。

欧州委のヨハネス・ハーン委員(予算・総務担)は2022年11月30日、「間違いなく、ハンガリーは正しい方向に進んでいる」が、「全体としては、改革の中心的な部分に関して十分でない事項が残っており、ハンガリーへのEU予算の拠出に関するリスクは引き続き存在する」と述べた。

(注)条件設定規則は、EU名義の共同債券を財源とする復興基金の設置を採択する際に、加盟国による復興基金を含めたEU予算の不適切な使用を防止し、EUの財務上の利益を守る目的で採択されたメカニズム。加盟国による、法の支配の原則に対する違反が認められる場合に、欧州委が同規則の手続きを発動した上で、EU理事会の特定多数決により、当該加盟国へのEU予算執行の一時停止などの措置をとることができる(2022年2月18日記事参照)。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー、EU)

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