米連邦下院議長選、多数派の共和党から選出できず、1月4日に再投票へ

(米国)

米州課

2023年01月04日

米国連邦議会では、1月3日に2023年度の第118議会が開会した。連邦下院では、多数派の共和党のケビン・マッカーシー議員(カリフォルニア州)の下院議長選出が有力視されていたが、3回の投票を経ても、選出に必要な過半数の票を獲得するには至らなかった。1回の投票で下院議長を選出できなかったのは1923年以来となる。

連邦下院(435議席、任期2年)では、2022年11月の中間選挙の選挙結果を反映し、政権野党の共和党が222議席、与党の民主党が212議席を占める(注)。共和党が10議席の僅差で多数派を奪還したが、過半数の218票を獲得するには4票しか落とせない紙一重の状況となっていた。下院議長選出に向けた投票では、第1~2回に共和党議員の19人が、また、第3回に20人がマッカーシー議員とは別の共和党議員に票を投じた。民主党議員は第1~3回とも212人全員が民主党の下院トップのハキーム・ジェフリーズ議員(ニューヨーク州)に票を投じた。

下院議長選出は3日に決着せず、4日に持ち越された。いずれかの候補者が過半数を獲得するまで投票が繰り返されることから、今後もマッカーシー議員が下院議長に選出されるかどうかは不透明だ。マッカーシー議員へ賛成票を投じなかった共和党のロブ・グッド議員(バージニア州)はメディアの取材に「決して引き下がらない」と語ったほか(BBC1月4日)、共和党のマット・ゲッツ議員(フロリダ州)は「春になろうと一歩も譲らない」と述べるなど(「ビジネス・インサイダー」1月3日)、さらなる事態の長期化も懸念される。なお、米メディアによると、これまでの再投票の最多記録は第34議会で、1855年から1856年にかけての2カ月間、133回の投票を経てナサニエル・バンクス議員が下院議長に選出された。

マッカーシー議員の下院議長選出に反対には、共和党内でこれまで指導部を率いてきたいわゆる「エスタブリッシュメント」への反発があるとの指摘もある。実際、マッカーシー議員は14年間にわたって共和党下院トップを務めてきた(「ワシントン・ポスト」紙電子版1月3日)。下院議長が選出されるまで法案審議などを進めることができないことから、米メディアは「共和党が直面する可能性のある課題が浮き彫りになった」(ロイター1月3日)、「共和党がいかに機能不全に陥っているか、不安定な立場に置かれているかを示すものだ」(CNN1月3日)、「議長選出に失敗したことは、共和党の分裂体質を浮き彫りにした」(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版1月3日)などと、こぞって共和党の党内不一致が際立ったと報じている。

なお、マッカーシー議員の下院議長選出が不透明なことから、米メディアでは、第2~3回の投票でマッカーシー議員への反対票を集めたジム・ジョーダン議員(オハイオ州)や、次期下院院内総務のスティーブ・スカリーズ議員(ルイジアナ州)の選出可能性も取り沙汰されている(ロイター1月4日)。

(注)バージニア州4区選出の民主党ドナルド・マキーチン議員が11月中間選挙後に死去したため、1議席が欠員。同選挙区では2月21日に補欠特別選挙が実施される。

(葛西泰介)

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