中銀、輸入キャッシュ・マージン規制を延長

(パキスタン)

カラチ発

2023年01月10日

パキスタン中央銀行(SBP)は12月30日、企業の輸入にかかる100%キャッシュ・マージン要求(CMR、2022年4月15日記事参照)を予定された12月31日で廃止せず、3月31日まで延長することを発表した(BPRD Circular Letter No. 37 of 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この規制では、企業は輸入代金を決済するまでの間、銀行に対してそれと同額の預金をしなければならない。多くの企業は銀行から借り入れを行うことになるが、この預金は無利息のため、SBP政策金利が16%にも上る中、企業は多大な金利負担を強いられる。日系企業が扱う鉄鋼製品や繊維機械も対象品目に含まれ、金利負担は日系企業やその取引先のパキスタン企業の経営を圧迫している。

在パキスタン日本商工会(JACI)と、日本大使館・在カラチ日本総領事館、ジェトロは2022年4月以降、繰り返し政府とSBPに対して、この規制の廃止や鉄鋼などの原材料品の適用除外を求めていたが、SBPの外貨準備が減少を続けるため、要望は聞き入れられなかった。12月30日時点のSBPの外貨準備額は56億ドルと、輸入1カ月分程度の危機的水準にまで減少している。

パキスタンの貿易は慢性的な赤字体質だ。輸出は約6割を繊維製品が占める一方、石油・ガス、化学製品、機械、食品など幅広い品目で輸入に依存している。エネルギー輸入額がほぼ倍増したことなどから、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)の貿易赤字額は396億ドルと、輸出額(325億ドル)をも上回った。

併せて、連邦政府は1月3日、エネルギー輸入を抑えるために全国緊急省エネ対策を閣議決定し、1)マーケットの営業は午後8時30分、結婚式場は午後10時まで、2)非効率な扇風機の生産は7月1日まで停止、そうした扇風機輸入には追加関税を課税、3)中央省庁の電気使用量を30%削減などとした。冬は結婚式シーズンでパーティーは通常深夜に及ぶ。また、3月下旬からはラマダン(断食月)が始まり、この間は夜間の外食や買い物が盛んになる。州政府や商業者などからはこの省エネ策に反対の声も上がっている。

(山口和紀)

(パキスタン)

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