2022年に8.7%の成長、2023年は4.0%の見込み

(イラク)

中東アフリカ課

2023年01月16日

世界銀行が1月10日に発表した報告書「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、世界のGDP成長率の推計は2022年に2.9%、中東・北アフリカでは5.7%(2023年1月16日記事参照)のところ、イラクは8.7%と高い成長を見せた。主要産業の石油生産が拡大したほか、油価の上昇も背景にある。

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響や油価の低迷もあり、経済成長率がマイナス11.3%と、大幅な落ち込みとなっていたが、2021年以降は新型コロナ感染の影響も落ち着き、プラス成長が続いている。一方で、世界経済が減速の見込みの中、油価の下落傾向もあり、イラクでは2023年は4.0%、2024年に2.9%と、成長は減速する見込みだ

【イラクの経済成長推移(見込みを含む)】

  • 2020年:マイナス11.3%
  • 2021年:2.8%
  • 2022年:8.7%
  • 2023年:4.0%
  • 2024年:2.9%

世界銀行の報告書によると、石油収入はあるものの、債務は対GDP比で34.8%と産油国の中では高い。また、人口約4,118万人のうち約5%が食糧危機の状態にあるという。

水不足や電力不足などもあり、経済活動への制約も多い。他方で、インフラ整備や建設プロジェクトの案件形成の動きや、イラクの最大の見本市「バクダッド国際見本市」が2022年に4年ぶり開催されるなど、経済の活動も見られる(2022年11月18日記事参照)。

イラクでは、2010年代はイスラム国(IS)に一時期、北部や西部の都市が占拠されるなど、混迷を極めた。近年も反政府デモや、組閣が難航、再選挙の要求などにより政権が定まらない期間もあった。2022年10月にはムハンマド・シヤーウ​​・スーダーニー首相による新政権の発足にこぎつけた(2022年11月7日記事参照)。一方で、不安定な政情が続いており、日本の外務省はバクダッドを含むイラクの一部エリアを危険レベル4の「退避勧告」に設定している。

(井澤壌士)

(イラク)

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