欧州投資銀行、新型コロナ治療薬開発の製薬ベンチャーへの融資を発表

(ベルギー)

ブリュッセル発

2023年01月13日

欧州投資銀行(EIB)は19日、ベルギーの製薬ベンチャーのエクゼビルバイオ(ExeVir Bio、以下:エクゼビル、本社:ゲント)と、同社の新型コロナウイルス治療薬の開発に向け、ベンチャーデットによる2,500万ユーロの融資契約を締結したと発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回の融資は、EUの研究開発支援枠組みである「ホライズン2020」における、感染症対策向けの融資制度を活用して実施される。

エクゼビルは、ベルギーを代表する研究機関の1つであるフランダース・バイオテクノロジー研究所(VIB)からスピンアウトしたバイオベンチャーで、南米に生息するラクダ科の動物であるラマに由来するVHHと呼ばれる抗体を活用して、感染症の予防や治療に役立つ抗体医薬品の開発・製造を行う。今回の融資により、エクゼビルは、開発を進める新型コロナウイルス治療薬の臨床試験を開始し、数年以内の上市(市場投入)を目指す。欧米では、免疫不全疾患の患者の割合は人口の約3%とされており、同患者群に対しては、現行の新型コロナウイルスのワクチンの効果は不十分で、かつ抗ウイルス治療薬の投与も難しいとされる。エクゼビルの抗体医薬品は、こうした課題を解決し、新型コロナウイルスと戦うための重要な手段となるという。エクゼビルはまた、同社が進める感染拡大対策の一環として、他の感染症も対象として研究開発を行っていく予定だ。

EIBのクリス・ペーテルス副総裁は「感染症に対する先進的な治療法の開発は、特に最も弱い立場にいる人々を守るために重要なことだ」と今回の決定の意義を強調するとともに、今後もバイオテクノロジー分野のイノベーションと研究開発を支援していく意向を示した。また、欧州委員会のマリヤ・ガブリエル委員(イノベーション・青少年担当)も「この新しい治療法は、最も脆弱(ぜいじゃく)な新型コロナウイルス感染症の患者に解決策を提供し、将来のパンデミックへの備えを強化することにも貢献する」とコメントした。

(大中登紀子)

(ベルギー)

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