ウクライナ産穀物輸出合意の延長、ロシア側は60日間と主張

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

欧州ロシアCIS課

2023年03月29日

国連は318日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」が延長されたと発表した。有効期間が120日間の同イニシアチブは、国連の仲介によりウクライナ、ロシア、トルコによって20227月に署名された後、11月に120日間延長され、2023318日が期限だった(2022年7月26日記事参照2022年11月21日記事参照)。

延長期間について、ウクライナとロシアで見解が割れている。ウクライナのオレクサンドル・クブラコフ復興担当副首相兼地方・国土・インフラ発展相は318日、自身のSNSでイニシアチブが120日延長されたと発表した。一方、ロシア側は期限到来前から60日間の延長を主張している。ロシア外務省は320日、518日を期限とする60日間の延長を決定したと発表した。トルコ、ウクライナ、国連に公式に伝達したが、反対意見は出なかったという。ロシア大統領府も、325日にプーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と電話会談を行ったところ、エルドアン大統領は60日間の延長を肯定的に評価したと発表した。

国連の発表では、今回の延長期間について言及がなかった。イニシアチブの規定によると、署名日から120日間有効とされ、署名国の1つが他署名国にイニシアチブの終了または修正を通知しない限り、120日間自動的に延長される。

ロシア外務省は320日の発表の中で、60日間に短縮したのは、ロシアと国連で締結した、ロシア産農産物輸出の正常化に関する覚書の実施に進展がないためとした。イニシアチブ再延長の条件として、ロシア農業銀行のSWIFT(国際銀行間通信協会)への接続復活、食料生産・輸送などに関わるロシア企業の資産・口座の凍結解除などを挙げた。ロシア政府と国連事務局は、20227月の「黒海穀物イニシアチブ」の署名に合わせ、同覚書を締結している。

イニシアチブの正式名称は「ウクライナの港からの穀物および食料の安全な輸送に関するイニシアチブ」とされ、署名3カ国と国連が共同で、ウクライナのオデーサ、チェルノモルスク、ユージニーの黒海沿岸3港からウクライナ産穀物を輸出する船舶の安全な航行を確保することが目的。国連の発表(318日)によると、イニシアチブが20227月に署名されて以降、黒海を通じてウクライナ産穀物および食料が世界45カ国に約2,500万トン輸出された。

(浅元薫哉)

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

ビジネス短信 5cd875658cc7dbc2