自動車大手ステランティス、ブラジル市場はエタノール活用が有効な戦略と認識

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年03月01日

2月23日付のブラジル現地紙「バロール」によれば、自動車大手ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は2月22日に行われた2022年決算報告会見の後、ブラジル市場ではバイオエタノールを自動車の燃料として活用することが経済的かつ利便性が高く、交通における脱炭素にも有効との考え方を示した。また、食糧供給に影響を与えないかたちでサトウキビ由来のエタノール生産が十分可能な市場の見方を示した。

タバレスCEOはまた、同市場で電気自動車(EV)が唯一のオプションになるとは考えておらず、電気自動車は中間所得層にとっては高価で、一部の都市の高所得者層向けのニッチなマーケットになる可能性があると説明している。

ブラジル自動車流通業者連合(Fenabrave)によれば、ステランティスはブラジル市場におけるシェアが最も大きなグループ会社だ(注1)。同社は国内シェア1位のフィアット(21.97%)、ジープ(7.03%)、プジョー(2.13%)を有している。こうした背景を踏まえ、タバレスCEOは、必要があれば同社ポートフォリオリオからブラジル市場に電気自動車を投入し、競合していく姿勢もあると述べている。

同日付「バロール」では、一部自動車業界の懸念として、2016年以降導入した電気自動車の輸入税免税制度(注2)が、コンパクトな中国産電気自動車の輸入を促す可能性があるとしている。中国企業は、電気自動車生産を見据えた投資を行っていることから、それまでの準備期間として免税は維持されるべきと主張している。

バイオ燃料の活用については、2021年にブラジル自動車製造業者協会(ANFAVEA)も自動車業界のサプライチェーン全体の経済活動から排出される二酸化炭素(CO2)に関し、バイオ燃料車による二酸化炭素削減効果の優位性を示したほか、VW(フォルクスワーゲン)ラテンアメリカも2021年7月、ブラジルをはじめとする新興国市場向けの戦略として、バイオ燃料の活用技術を開発するR&D(研究開発)センターをブラジル国内に設立することを発表している。自動車産業におけるバイオエタノール活用の動きは以前から継続されている(2022年8月24日付地域・分析レポート参照)

(注1)2022年累計かつ乗用車と商用車の合計

(注2)開発商工サービス省傘下の貿易審議会(CAMEX)は、2016年3月24日付決議27号により、例外関税制度として一定の仕様を満たす電気自動車に対する輸入税を免税した。

(古木勇生)

(ブラジル)

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