米国は農産物貿易や自動車分野の非関税障壁を問題視、2023年外国貿易障壁報告書

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月05日

米国通商代表部(USTR)は3月31日、米国の物品・サービス貿易や直接投資に対する障壁を国・地域別に示した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

2023年版のNTEは64カ国・地域を対象としている。これらの国・地域で米国の財貿易額の99%、サービス貿易額の66%を占める。ページ数の内訳を見ると、中国(41ページ)が最も多く、次いでEU(32ページ)、インドネシア(17ページ)、インド(14ページ)、日本、ロシア(いずれも13ページ)が続く。

主な報告対象分野は、輸入政策、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)措置、政府調達、知的財産保護、サービス分野の障壁、デジタル貿易と電子商取引に対する障壁、投資障壁、補助金、非競争的慣行、国有企業、労働、環境の13分野となっている。

USTRはプレスリリースで(1)農産物貿易、(2)デジタル貿易、(3)産業政策、(4)労働、(5)貿易の技術的障壁、に関して主な国・地域の障壁を例示した。(1)農産物貿易では、前年のNTE(2022年4月4日記事参照)と同様、中国やインドネシアの不透明で煩雑な施設登録要件を挙げた。インドやトルコ、メキシコ、EUの科学的証拠に基づかない、または過剰なSPS措置なども問題視した。(2)デジタル貿易では、中国、EU、インドなどが米国のデジタル製品・サービスの輸出に重大な影響を与える制限的なデータ政策を取っていると指摘し、今後もこれらの国の政府に対して、障壁を取り除くために働きかけていくと主張した。

(3)産業政策では、中国が自国企業に大規模な財政支援や規制面での優遇を与える一方、外国企業に不利な政策を公式・非公式に追求していると非難した。また、中国は先進製造業などで生産・市場シェアの目標を設定しているが、それは非市場的措置を通じてしか達成できないとの懸念を示した。

(4)労働については、中国が新疆ウイグル自治区での強制労働にいまだ十分に対処していないことや、ドミニカ共和国の砂糖産業での労働法執行を巡る課題を取り上げた。(5)TBTについては、前年に続き、米国の連邦自動車安全基準(FMVSS)に適合する自動車を排除するような安全基準を設けるフィリピンや台湾などに改善を働きかけていくとした。そのほか、日本の自動車分野の非関税障壁として、短距離通信システム用の周波数割り当てに言及した。

(甲斐野裕之)

(米国)

ビジネス短信 8c4ede8ab15a878c