オーストラリア産大麦へのAD関税と補助金相殺関税の撤廃検討する再調査開始

(中国、オーストラリア)

北京発

2023年04月18日

中国商務部は4月14日、オーストラリア産大麦(注1)の輸入に課しているアンチダンピング(AD)関税と補助金相殺関税について、業界団体の申請を受け、「アンチダンピング条例」第49条と「反補助金条例」第48条に基づき、両関税を引き続き徴収する必要性について再調査を開始するとの公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。再調査は4月15日から開始、2024年4月14日以前に終了する。

中国はオーストラリア産大麦に対して、2018年11月にアンチダンピング調査、翌12月に反補助金調査を相次いで開始し、その結果、2020年5月19日からアンチダンピング関税と補助金相殺関税を徴収していた(注2)。この措置に対して、オーストラリアは中国をWTOに提訴する(2020年12月17日記事参照)など、この問題を巡って両国の対立が続いていた(注3)。

その後、オーストラリアの政権交代などもあり、2022年11月には習近平国家主席とアンソニー・アルバニージー首相(労働党)の首脳会談が行われたほか、同年12月21日に訪中したペニー・ウォン外相と王毅国務委員兼外交部長(当時)が北京で会談し、経済貿易問題を含む6分野での対話の始動・再開に合意するなど(2022年12月28日記事参照)、両国の関係改善に向けた動きがみられていた。

こうした環境の中、商務部は4月11日の報道官談話で、両国はWTOの枠組みの下でオーストラリア産大麦の措置に関する紛争について友好的な協議を行い、合意に達したと明らかにしていた。

第1四半期のオーストラリアからの輸入は好調、輸入額で日韓を抜き第5位に

海関総署が発表した2023年第1四半期(1~3月)の貿易統計によると、オーストラリアからの輸入額は前年同期比11.2%増の391億2,340万ドルだった。主要な貿易相手国・地域の中では、2桁減となった日本や韓国を上回り、ASEAN、EU、米国、台湾に次ぐ第5位となっている。

華東師範大学オーストラリア研究センターの陳弘主任は、石炭をはじめ、小麦、綿花、鉄鉱石などのオーストラリア産品の対中輸出が拡大していることを挙げ、「中国とオーストラリアの経済貿易関係は既に実質的な改善段階に入った」と指摘している(「環球時報」4月15日)。

(注1)該当するHSコードは「中国輸出入税則」の10031000、10039000。

(注2)アンチダンピング関税は73.6%、補助金相殺関税は6.9%とされ、合わせて計80.5%の追加関税が課されている。

(注3)オーストラリア産品の輸入に対する中国の措置としては、大麦のほか、ワインについても2021年3月28日から、アンチダンピング関税を徴収している。石炭など一部の同国産品についても、中国が輸入を一時停止したなどの報道がなされていた。

(小宮昇平)

(中国、オーストラリア)

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