シティバナメックスの小口リテール部門売却方法、株式上場方針で決着

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年05月30日

米国の金融大手シティグループは5月24日、新規株式公開(IPO)を通じて、傘下のメキシコ商業銀行大手のシティバナメックスのうち、小口リテール部門を上場させ、シティグループの経営から切り離すと発表した(同グループ5月24日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。具体的には、個人と中小企業向けの銀行サービス、クレジットカード事業、個人と中小企業向け貸付事業、個人年金運用(AFORE)などの小口リテール部門は「バナメックス」としてシティグループから切り離し、グループ本体には大手法人向け銀行サービスや富裕層向けプライベートバンキングサービスを残して、メキシコでのビジネスを継続する計画だ。実際の株式公開は2025年に行うことを視野に入れている。

シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は5月24日のプレスリリースで「慎重な検討の結果、株主に対してバナメックスの価値を最大化し、わが社の経営を簡略化するための最適な道筋は、(特定顧客への事業売却と株式公開という)両にらみのアプローチから方向転換し、株式公開に集中することだ」と説明している。

透明性高い選択と銀行協会は歓迎

シティグループは2022年1月にシティバナメックスを売却する方針を発表し、識者の見方として買い手候補者も報じられていた(2022年1月13日記事参照、注)。その後、当地の主要紙によると、シティグループはバナメックスの小口リテール部門の売却を巡り、スペインのサンタンデール銀行をはじめ複数の銀行と交渉をしてきたが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領のメキシコ資本による買収を求める声などもあり、最終的には鉱山開発、鉄道事業、映画館運営などを手掛ける財閥グルーポ・メヒコとの交渉が大詰めを迎えていた。しかし、テワンテペック地峡開発を巡りグルーポ・メヒコと連邦政府の関係が緊迫化した(2023年5月22日記事参照)。AMLO大統領は5月23日の記者会見で、バナメックスを政府と民間の共同出資によって買収し、政府がマジョリティーを握るかたちで運営する意向があることを示した(大統領府記者会見録5月23日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この状況を受け、日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)のフランシスコ・セルバンテス会長は同日、バナメックス売却を巡って投資家の不安を招くような事態に発展することを憂慮すると、メキシコ保険業協会(AMIS)年次総会の場で懸念を表明した(「エクスパンシオン」紙5月23日)。

他方、メキシコ銀行協会(ABM)のダニエル・ベケル副会長は5月24日の記者会見で、証券市場への上場という透明性の高いかたちで取引が行われることを歓迎し、メキシコの証券市場で近年不足していたIPOが行われることにより、証券市場が活性化するとの期待感も示した(「レフォルマ」紙5月25日)。

(注)シティグループは2022年1月にシティバナメックス売却の方針を発表したが、買い手が定まらなかった。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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