モンゴル国内最大手のハーン銀行が株式を上場

(モンゴル)

北京発

2023年05月16日

モンゴル証券取引所は4月24日、商業銀行国内最大手のハーン銀行の新規株式公開(IPO)の募集が4月13日から4月19日まで行われ、取引が正常に完了したと発表した(注1)。

ハーン銀行は、総株式の10%に当たる1億9,121万9,800株を1株当たり959トゥグルク(約36.9円、1トゥグルク=約0.0385円)で、戦略的投資家(注2)と一般投資家に公開し、合計1,833億7,978万8,200トゥグルクを調達した。調達した資金のうち85%(1億6,253万6,830株)が戦略的投資家からのものだった。なお、IPOの募集に対し、個人・法人から計2万9,345件、約3,360億トゥグルクの応募があり、募集枠を約83.2%上回った。

ハーン銀行が発表した証券目論見書では、調達した約1,834億トゥグルクのうち、35%を電子化・ITへの投資に、34%を環境プロジェクト融資に、31%を住宅ローン融資に使用すると示している。

2021年1月29日の銀行法改正により、モンゴルの銀行システムに影響力を持つ銀行にはIPOが義務付けられた。また、銀行の大株主が単独または利害関係者と合わせて総発行済み株式の20%を超えて保有できないと制限されたため、条件を満たさない大株主は、2023年12月31日までに保有株式の一部を手放す必要がある(注3、注4)。

大手5行のうち、すでに業界4位(注5)の国営銀行(Statebank)は2022年10月に、3位のゴロムト銀行は同年11月にそれぞれIPOを完了しており、残る2行は2位の貿易開発銀行(TDB)と5位のハス銀行だ。ハス銀行はすでに金融規制委員会にIPOの申請書類を提出済みで、2023年5月1日にモンゴル銀行(中央銀行)からIPOの許可を得た。

(注1)主幹事会社はBDSec証券、副幹事会社はタワンボグド・キャピタル証券が務めた。

(注2)ここでの戦略的投資家とは、2億5,000万トゥグルク以上の株式を購入し、上場後6カ月間は売却しない条件で事前契約した投資家を指す。

(注3)当初は2022年6月30日をIPOの期限としていたが、新型コロナウイルスによる景気悪化を考慮し、1年間延期されていた。

(注4)法改正の背景として、銀行の大株主がその立場を利用して銀行から私的事業に融資させ、その一部事業が不良債権化することが問題となっていた。このため、こうした問題を踏まえて特定の企業株主が銀行を通じて不正融資を行うことを防止する取り組みが進められている。また、モンゴルの資本市場が銀行に偏りすぎているため、株式市場を成長させる必要性が指摘されている。

(注5)各行の2023年第1四半期決算書(監査前)における貸出残高を基準とした。

(藤井一範)

(モンゴル)

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