非友好国資産の政府管理を可能にする大統領令が発効

(ロシア)

欧州課

2023年05月08日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4月25日、ロシアに対し非友好的措置をとる国(非友好国、2022年3月9日記事参照)の企業などがロシア国内に持つ資産(ロシア企業の株式などを含む)を一時的にロシア政府が管理することを可能にする大統領令に署名、即日発効した(2023年4月25日付大統領令第302号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。管理を行う機関には連邦国有資産管理庁(ロスイムシェストボ)が指定された。

同大統領令では、外国企業などが保有する資産を一時管理下に置く場合の条件を、a.ロシア政府、ロシアの法人・個人が非友好国に所有する資産の所有権、財産権がはく奪または制限された場合、b.それらの権利がはく奪・制限される恐れが生じた場合、c.国家、経済、電力エネルギー、国防に対する危機が生じる恐れが発生した場合、としている。

本大統領令の発効により、ドイツ政府が国有化したエネルギー大手ユニパーがロシアで所有するユニプロの株式の83.73%、フィンランドの電力大手フォータムのロシア子会社の株式の98.23%がロスイムシェストボの管理下に置かれた。両社は、いずれもロシア国内で発電事業を行っている。なお、ユニパーは2022年11月、ロシア国有ガス会社ガスプロムの輸出部門ガスプロム・エクスポルトに対し、ガス供給契約不履行を理由に仲裁手続きを開始している(2022年12月9日記事参照)。

外国企業の資産を一時的に管理下に置く背景には、非友好国企業によるロシア政府の意図に反する意思決定を回避する狙いがあるとみられる。連邦下院経済政策委員会のミハイル・デリャギン副委員長は「本大統領令により非友好国によるロシアの電力産業への悪影響のリスクを排除できる」と指摘する。また、経済学者のニキータ・クリチェフスキー氏のように、資産売却などによる国外への資本逃避を避ける観点から本措置を評価する声も上がっている(イズベスチヤ4月26日)。

その一方で、ロシアの法律コンサルティング会社DSLサービスは、本大統領令では対象となる資産の範囲が明確でないこと、管理下に置く場合の条件が幅広くロシア政府の解釈に左右される恐れがあることなど、今後の適用拡大を懸念している(ヤンデックス・ゼン5月3日)。

(欧州課)

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