再生可能エネルギー比率を2050年までに70%に、輸出も再開へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年05月15日

マレーシア政府は59日、「再生可能エネルギー戦略開発ロードマップ」に沿って、電力供給量に占める再エネ比率を2050年までに70%に高めることを目標に掲げた(天然資源・環境・気候変動省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これにより、新たなビジネス機会を創出し、RE100(注)を中心とした多国籍企業の投資誘致を目指したい考え。マレーシアは第12次マレーシア計画で、2025年までに再エネ比率を31%にまで引き上げることを表明していた(2021年10月12日記事参照)。

ニック・ナズミ天然資源・環境・気候変動相は、発電設備や送電網整備のために必要な投資額は、2050年までに総額6,370億リンギ(約191,100億円、1リンギ=約30円)に上ると見込んだ。同相と共同会見を行ったラフィジ・ラムリ経済相によると、マレーシアの電力供給に占める再エネ比率は、202212月時点で25%だった。政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラル化に向け、再エネの導入スピードを加速させたい考えだ。再エネ転換の取り組みの一環として、政府は2023年末までに5,000万リンギを割り当て、政府庁舎・施設に太陽光発電設備を設置することも決定した。次年度の国家予算にも、設備追加費用としてさらに多額の金額を積み立てる。再エネへの転換は、長期的には国民の電力コストを軽減するとも述べた。

また、202110月以降禁止していた再エネの輸出も解禁する。再エネのシンガポールへの輸出禁止は、マレーシア国内の再エネ産業の発展促進を目的に、前のイスマイル・サブリ政権下で始まったもの(当時のエネルギー・天然資源省プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。ただし、この措置に対して、マレーシア国内からも反発の声が出ていた。例えば、禁輸導入半年後の20225月には、ヨー・ビーイン下院議員が「自身がエネルギー・科学技術・環境・気候変動相(当時)在任中だった2018年末以降、シンガポールとの再エネ取引には積極的に取り組んできた」と振り返り、投資誘致やグリーン分野の雇用機会創出に向け、輸出を解禁すべきだと政府に要請していた。その後、現在の政権下で、20233月ごろから輸出解禁に向けた検討が行われてきた。

輸出再開に伴い、国際送電のための電力取引市場も整備するという。ラフィジ・ラムリ経済相は「取引のメカニズムは、天然資源・環境・気候変動省とその他管轄機関が定める」と述べるにとどめたが、同メカニズムの確立により、マレーシアの再エネ事業拠点としての優位性は増すと期待を示した。

(注)企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ(環境省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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