米アセンド・エレメンツ、バッテリーリサイクルで10億ドルの供給契約締結

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月14日

バッテリー材料のリサイクル企業、米国のアセンド・エレメンツ(本社:マサチューセッツ州ウエストボロー)は6月7日、米国大手バッテリーメーカーとの間で、10億ドル相当のバッテリー材料の供給契約を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。複数年の契約で、顧客は最大50億ドル相当まで材料の供給を求めることができる。アセンド・エレメンツは2024年第4四半期(10~12月)から供給を開始するが、顧客となるバッテリーメーカーの名前は公表されていない。

2015年設立のアセンド・エレメンツは電気自動車(EV)などに搭載するリチウムイオンバッテリーのリサイクル企業だ。マサチューセッツ州のほか、ミシガン州、ジョージア州に生産拠点を持ち、2022年9月に韓国のSKバッテリーアメリカ(SKBA)、2023年2月にはホンダとリサイクル契約を締結した。また、同社は2022年10月、インフラ投資雇用法に基づき、国内バッテリーサプライチェーンの強化に向けた助成として、エネルギー省から約4億8,000万ドルを受給されることになった(2022年10月21日記事参照)。

同社が今回供給するのは、使用済みバッテリーからリサイクルされた、正極材の前段階の前駆体で、ケンタッキー州ホプキンスビルに建設中の同社拠点で生産する予定。この拠点は年間でEV約75万台分の前駆体を生産できるようになるという。

リサイクルメーカーと大手バッテリーメーカーの協業に関して、レッドウッド・マテリアルズとパナソニックが2022年11月に、正極材と銅箔(どうはく)の供給契約を締結している(2022年11月16日記事参照)。

米国では、バッテリー生産拠点の設立が相次いでおり、中西部から南東部にかけて「バッテリーベルト」が構築され始めている。ケンタッキー州や隣接するテネシー州では、フォードと韓国SKイノベーションが2021年9月に、合弁で新工場を設立すると発表した(2021年9月29日記事参照)。ノースカロライナ州では、トヨタと豊田通商が2025年から新拠点でバッテリーの生産を開始する(2021年12月7日記事参照)。

アセンド・エレメンツのマイク・オークロンリー最高経営責任者(CEO)は「世界の前駆体のほぼ100%がアジアで生産されている。このような重要なバッテリー材料を米国で製造できない理由はない。北米のサプライチェーンを確立し、二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、エネルギーの独立性を確保するために、われわれは独自のバッテリー材料を製造する必要がある」と述べた。リサイクルによる「クローズドループ」(注)が確立することで、バッテリー材料の安定確保につながることが期待されている。

(注)不純物を取り除くことで、素材として再利用し、無限に循環利用すること。

(大原典子)

(米国)

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