憲法を改正、次回総選挙から議員定数を126に

(モンゴル)

北京発

2023年06月22日

モンゴル国家大会議(国会)は5月31日、出席した議員68人のうち66人の賛成(97%)により、憲法改正案を可決した。オフナー・フレルスフ大統領は6月5日、大統領の拒否権を発動せずに、改正された憲法を受理し、憲法改正が正式に確定した。今回の憲法改正の要点は次の2点。

  1. 議員定数を126に増やすこと(注1、注2)
  2. 国会議員選挙を混合制で行い、78人を多数代表制(選挙区)で選び、48人を比例代表制で選ぶこと。

議員定数の増加の必要性に関して、ロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は5月5日の憲法改正案提出時の演説で、議員定数を76と定めた1992年の民主憲法制定以降、人口が100万人増加し、議員1人当たりの有権者数が増加したと指摘した。また、議員定数を増やし、議員1人当たりの影響力を減らすことに関して、21の政党が合意して共同声明を発表したとも述べた。さらに、ダシゼベグ・アマルバヤスガラン官房長官は、国会の常任委員会で法案を審議する際、11人の委員が出席し、6人が賛成すれば法案が本会議に進むため、議員を増やして法案審議の質とプロセスを改善する必要があると指摘していた(「news.mn」5月7日)。憲法改正案承認後の5月31日、ゴンボジャブ・ザンダンシャタル国会議長は、議員定数が76の場合、与党の中で閣僚が多数派を構成(注3)することで、立法と行政の権力均衡や相互監視の機能が失われる恐れがあると主張した。

選挙区の多数代表制だけの問題点として、アマルバヤスガラン官房長官は、死票が多く出ることや、選挙区への利益誘導を国益よりも優先すること、知名度や資金力のある候補者が有利になることを指摘した。

比例代表制を併用するメリットとして、オヨーンエルデネ首相は、在外国民の参政権を保障できるだけでなく、議員の男女比の均等化が図れることや、利益団体、労働組合、社会的少数者など社会の各階層の代表者の意見を政策に反映できるなどの効果が期待できると述べた。

憲法改正に続いて、国会法や国会規則法、政党法、国会議員選挙法など、憲法改正によって影響を受ける各法律を改正する必要が生じている。ゴンボジャブ・ザンダンシャタル国会議長は「これらの法改正が行われてこそ、憲法改正が完成する」と述べ、各議員へ引き続いての協力を求めた。

なお、次回の国会議員総選挙は2024年6月後半に実施される予定だ。

(注1)憲法改正前は、国会議員の定数は76で、各議員を選挙区で多数代表制により選ぶことになっていた。

(注2)当初国会に提出された改正案では、議員定数を152(選挙区76、比例代表76)に増やすとなっていた。しかし、世論の反対を受け、126に減らされた(「news.mn」5月16日)。

(注3)39議席以上を獲得した党が与党になるが、現在の閣僚ポストは首相を含め22のため、理論的には与党の中の過半数を閣僚で占めることも可能。

(藤井一範)

(モンゴル)

ビジネス短信 5f5faae959ff6016