政治スキャンダルでペトロ政権の改革にブレーキ

(コロンビア)

ボゴタ発

2023年06月20日

コロンビアのグスタボ・ペトロ政権が2022年8月の発足以来、最大の政治的スキャンダルに見舞われている。2023年6月2日、2022年に行われた大統領選挙におけるペトロ陣営の選挙キャンペーン最大の協力者で、政権発足後に要職に就いたラウラ・サラビア大統領補佐官とアルマンド・ベネデティ駐ベネズエラ大使の2人が更迭された。そのほか、不正なルートで入手した選挙資金の存在に関する疑惑の浮上、関係者の死亡など、多くの憶測を呼ぶ異常な状況が続いている。

大統領の最側近でもあるサラビア補佐官は、2023年1月に自身の官宅で、現金数千ドルの盗難事件が起きた。ところが、その取り調べの際に、同大統領補佐官宅で働くベビーシッターに対し政府施設でポリグラフ調査が行われたこと、さらに、違法な通話盗聴が行われたことが明らかになった。サラビア大統領補佐官は、結果的に職権乱用として検察の調査対象となった。

ペトロ大統領の選挙キャンペーンで要職を務めていたアルマンド・ベネデティ駐ベネズエラ大使については、サラビア大統領補佐官との電話音声内容が公表された。この電話音声内容には、同大使による現在の処遇に対する不満や不正なルートで得た150億ペソ(約5億1,000万円、1ペソ=約0.034円)の資金の存在が含まれていた。さらに同大使が、同資金の存在を理由にサラビア大統領補佐官や大統領までも脅すような内容までもが含まれていた。

ペトロ大統領は、両事態の沈静化のため、ベネデティ大使とサラビア大統領補佐官を更迭した。現政権のスキャンダルは更迭劇に発展した両事態にとどまらず、大統領の警備担当で、盗難事件の取り調べ責任者でもあった陸軍大佐が6月9日に遺体で発見されるという事件までも発生した。

調査機関インバメルが6月2日に発表した世論調査結果によると、ペトロ大統領の支持率は33.8%、不支持は59.4%とその差が一層開いた。4月末には医療保険制度改革を巡る与党内の対立により、連立が崩壊すると同時に7閣僚が交代している(2023年4月27日記事および同5月1日記事参照)。一連のスキャンダルは政権の信頼を失墜させ、支持率の回復に暗い影を落とすと同時に、保険制度、労働制度、年金制度などペドロ政権が打ち出す一連の改革アジェンダを困難にするとの見方が広がっている。

一方、ペトロ政権の改革にブレーキがかかるとの予想が、投資家にとってはプラス材料になるという見方もある。6月11日付の現地紙「セマナ」紙は「(金利の引き上げや税制改革で調整が進む)マクロ経済への悪影響が緩和されるため、カントリーリスクにとってはポジティブとなる」とのエコノミストのコメントを紹介している。

(豊田哲也)

(コロンビア)

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