ドイツと中国の政府間協議を実施、気候変動対策でMOU締結も

(ドイツ、中国)

ベルリン発

2023年06月29日

ドイツと中国は6月20日、ベルリンで両国の首相と閣僚らが参加する第7回ドイツ・中国政府間協議を行った外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。中国の李強首相にとって就任後の初の外遊となった。政府間協議の議題は気候変動対策、経済関係を中心に、ウクライナ情勢や食料安全保障などだった。

オラフ・ショルツ首相は協議後の共同記者会見で、両国の経済関係について「中国からの経済的切り離し(デカップリング)には関心がない」と明言。相互の経済関係の発展を目指し、中国市場で外国企業が直面する競争上の課題や、ドイツのサプライチェーン・デューディリジェンス法にも言及しつつ、製品の生産過程の労働にかかる人権状況の改善を求めた。また、脱中国依存を目指すとして「ドイツはアジアや他の国々との経済関係を積極的に拡大している」と述べた。ウクライナ情勢については、中国がロシアに対し和平に向けた影響力を行使し、また、ロシアへ武器を提供しないよう求めた。

加えて、ドイツと中国は気候変動、金融、保健の分野で対話の枠組みを立ち上げることも発表した。特に気候変動については、両国は20日に「気候変動とグリーン移行にかかる対話・協力メカニズムの設立」に関する覚書(MOU)を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。両国は、気温上昇を産業革命前と比較して1.5度以内に抑えるというパリ協定の目標を念頭に、産業の脱炭素化、エネルギー移行と再生可能エネルギー、省エネルギー、循環型経済、温室効果ガス(GHG)排出量取引、サステナブルファイナンスなどの8分野で協力を行うとしている。

ドイツメディアは今回の政府間協議について、公共放送ARD(6月20日)はフィン・マイヤー・クックク氏(注)へのインタビューを報じ、中国は米国との対立関係の中で経済的な関係を利用してドイツを味方につけようとしているとした。経済紙「ハンデルスブラット」(6月21日)は「政府内には中国との協議に対するショルツ首相の姿勢に不満の大きな声、専門家らは経済偏重を批判」などと、批判的な見方を報じている。

ドイツ産業界は「公平な競争環境」要望

政府間協議の前日の19日には、中国政府の招待による座談会が開催され(2023年6月27日記事参照)、両国間の投資や気候変動対策での協力について意見交換が行われた。

政府間協議に先立ち、複数の企業・業界団体は声明を発表していた。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は「ドイツ・中国政府間の対話は重要。経済関係の互恵性と対等なパートナーシップを望む」(20日)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)は「中国市場で製品に適用される国際規格と国内規格が併存している状況の改善が必要」(19日)などと、中国が重要な経済パートナーと強調する一方で、中国に公平な競争条件を求める声が相次いだ。

(注)ドイツの中国専門インターネットメディア「チャイナ・テーブル」編集部長。

(中村容子)

(ドイツ、中国)

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