中国人民銀行、10カ月ぶりにローンプライムレートを引き下げ

(中国)

中国北アジア課

2023年06月20日

中国人民銀行(中央銀行)は6月20日、最優遇貸出金利の指標であるローンプライムレート(以下、LPR)の期間5年以上を4.30%から4.20%に、期間1年を3.65%から3.55%に、それぞれ0.10ポイント引き下げると発表した。

前回のLPR引き下げは2022年8月22日(2022年8月22日記事参照)で、10カ月ぶりの引き下げとなる(LPR推移は添付資料図参照)。中国人民銀行は2023年6月13日に7日物リバースレポとSLF(注1)、6月15日にMLF(注2)をそれぞれ0.10ポイント引き下げており、景気刺激策を連続して実施している。

中国人民銀行の易鋼総裁は6月7日に上海市で開催された座談会において、「金融政策を的確かつ力強く実行したことで、マネーサプライ(M2)増加率は11%以上を維持し、社会全体の融資規模の成長率は約10%となり、経済の発展と回復に寄与した」と説明した。他方で、「現在、中国は新型コロナウイルス感染拡大から経済を立て直している段階にある。中国経済は弾力性があり、大きな潜在力を有し、政策の余地も十分にある。金融政策手段を複合的に活用し、流動性を合理的かつ十分な水準に維持し、融資総量を適度で安定的な水準に保ち、資金調達コストの着実な削減を促進する」と示し、金融政策を継続し実体経済を支援していくことを示唆していた。

華宝証券の蔡夢苑エコノミストは6月14日のレポートで、「経済回復の勢いが鈍化し、個人や企業の資金需要が低いことから、5月は貨幣の需要と供給の双方が落ち込み、新規貸し出しなど主要な項目が減速した。今回の政策金利引き下げは、安定成長を背景に、中国人民銀行が中央銀行として経済を保護する機能のほかに、経済を加速させるための役割としての期待が表れている」と指摘している。

(注1)SLFは、常設貸出ファシリティー(Standing Lending Facility)を指す。中国人民銀行が資金供給を行うための金融政策手段の1つ。6月13日の引き下げにより、翌日物が2.75%、7日物が2.90%、1カ月物が3.25%となった。

(注2)MLFは、中期貸出ファシリティー(Medium term Lending Facility)を指す。中国人民銀行が資金供給を行うための金融政策手段の1つ。MLFはLPRを算出する指針となる。6月15日の引き下げにより2.65%となった。

(亀山達也)

(中国)

ビジネス短信 c54190cc7cee03ca