米財務省、為替報告書を公表、為替介入監視リストから日本を除外

(米国、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スイス、マレーシア、シンガポール)

ニューヨーク発

2023年06月19日

米国財務省は6月16日、為替政策報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同報告書は半期ごとに議会へ提出されており、財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、今回は2022年12月までの直近1年間の為替政策を分析・評価した。

今回の報告書では、バイデン政権発足以降のこれまでの4回と同様に、「為替操作国・地域」に該当する国・地域はないと結論付けた。為替操作国・地域の認定は、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)の全てを満たしているかどうかを基に判断する。前回の報告書(2022年11月11日記事参照)では、スイスが3つの基準を全て上回ったが、対外不均衡是正に向けた2国間協議を続けるとして「為替操作国・地域」への認定は見送られた。なお、スイスは今回、1つの基準を上回ったとして「為替操作監視対象」リスト(注2)に加えられた。同リストには、中国、韓国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、台湾が前回に引き続き指定されたが、前回に引き続き3つの基準のうち1つのみ該当(財・サービス貿易黒字額基準)だった日本は外れた。

今回の報告書では、同リストから外れた日本に関する言及は、ほとんどなかった。2022年9月と10月に日本が行った為替介入に触れて、「2カ月間で623億ドルのドル売り・円買い介入を実施し、円の価値を高め、円安を押し戻した」「日本の当局は、最近高まっている円のボラティリティを低下させることを目的したものと述べている」として、事実関係の言及にとどめた。

貿易赤字が突出している中国については、為替介入の有無を公表しておらず、為替レートの仕組みに関する透明性を欠いている異例の国として、前回と同様に批判している。こうした不透明性が、貿易不均衡の問題に加え、中国が監視リストに指定され続ける理由として、財務省は今後も動向を注意深く監視していくとした。

(注1)財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(年間150億ドル以上の財・サービス貿易黒字額)、(2)GDP比3%以上の経常収支黒字、または為替レート評価フレームワーク(GERAF)を用いて財務省が実質的に経常収支「ギャップ」があると推定した場合、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額)という3つの基準。

(注2)上記3基準のうち2つに該当した国・地域は「監視対象」リストに登録される。登録されると、少なくとも今後2回の報告書で監視対象国・地域として取り上げられ、3つの基準での改善が一時的でなく永続的なものとなっているかどうかについて評価される。

(宮野慶太)

(米国、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スイス、マレーシア、シンガポール)

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