下院議会で税制改革法案の改定版を提出、2023年内の実現に向けて

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年07月04日

ブラジルのアギナルド・リベイロ下院議員は6月22日、2019年憲法改正法案45号(PEC 45/2019)の内容を刷新して下院議会に提出した。リベイロ議員は同日の記者会見で「ブラジル社会全体から提案や批判を受け法案を改善していきたい」と述べた。また、「法案審議は7月1週間目から始まる予定で、これはアルトゥル・リラ下院議長が設定したスケジュールだ」と説明した(注1)。

憲法改正手続きは国会の上下両院で2回行われ、議員投票の5分の3以上の票が得られた場合に承認される。6月23日付の現地紙「バロール」によれば、リラ下院議長は7月7日までに2回の投票を行う予定。

今回提出された法案の内容は、州税の商品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)、連邦税の工業製品税(IPI)、2種類の連邦社会保障負担金である社会統合基金(PIS)および社会保険融資負担金(Cofins)を廃止し、州・市税の代替として財サービス税(IBS)を、また、3つの連邦税の代替として財サービス負担金(CBS)を新たに設け、付加価値税として課すものだ。IBSは州・市によって共同運用される。一方、CBSは連邦政府によって運用される。

新たな税制改革法案の前の法案では、ICMS、ISS、IPI、PIS、Cofinsの代替として、これら5種の税金を1つにまとめた新たな種類の税をつくることが想定されていた。下院議会の公式サイト(4月25日付)によると、リベイロ議員自身もその仕組みをより効果的と捉えていたが、6月5日付の現地紙「フォーリャ」によれば、知事や市長の間では、州や自治体の自立性を確保するため連邦政府とは別の枠組みが必要とされており、知事や市長の理解を得るため、今回のように2つの税を設ける案に支持が高まったという。

税制改革にはPEC45/2019のほか、上院議会で審議されている2019年憲法改正法案110号(PEC 110/2019)も存在する(注2)。ロドリゴ・パシェコ上院議長は2023年6月21にブラジルの全国工業連盟(CNI)が開催したセミナーで、下院議会のPEC 45/2019を支持する意向を示し、2023年内の両院での可決は可能と述べている。フェルナンド・アダジ財務相も同イベントでPEC 45/2019への支持を表明している。PEC 110/2019は上院での報告担当者すら決まっておらず、上院で同法案の進展は約1年以上みられない状況だ。

(注1)下院議長が下院における法案の優先順位決定権を持っている。

(注2)下院議会公式サイト(6月2日付)によると、リベイロ議員は新法案を作成するためPEC 110/2019の内容も参考にしたという。ICMS、ISS、IPI、PIS、Cofinsの代替に2つの税を課す仕組みは本来PEC 110/2019に組み込まれている。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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