人材不足や物流量の減少が課題、在香港日系企業アンケート調査

(香港)

香港発

2023年07月24日

ジェトロは在香港日本総領事館、香港日本人商工会議所と共同で、在香港日系企業などを対象にした「第12回香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査」を実施した(調査期間は7月3~7日、調査結果は添付資料参照)。調査結果の主なポイントは次のとおり。

2023年1~6月期のDI値は低下の一方、同年7~12月期の見込み値は改善

2023年1~6月期のDI値(注)は、2022年7~12月期と比べ10.7ポイント低下のマイナス14.8となった。一方、2023年7~12月期のDI値(見込み値)は前期(23年1~6月期)より26.2ポイント上昇の11.4で、改善を見込む企業が増加した。

3分の1の企業で人材流出、うち約半数が代替人材を確保できず

人材流出があったと回答した企業は33.6%で、そのうち48.8%が代替人材の確保ができていないと回答した。不足する人材として回答数が多い順でみると、バックオフィス職・アシスタント職、営業職、技術職・エンジニアだった。また、飲食などでも現場スタッフが不足しているとの回答があった。

昨今の物流環境の変化で、コスト上昇や輸出入量の減少が課題

物流環境の評価で、「人件費」の悪化を回答した企業(43.7%)が最も多く、次いで「輸送コスト」の悪化(38.6%)が多かった。香港の輸出入の状況については、物流量が減少したとした企業がいずれも約半数に上った。その要因として、中国市場や世界経済の停滞による影響との回答が多く、新型コロナウイルス禍で生じた香港を迂回(うかい)した貿易形態の定着も指摘された。

人員往来の回復の度合いが低いのは、社内出張者と顧客・取引先

新型コロナウイルス感染拡大前との比較で、日本から香港への渡航状況について聞いたところ、「社内出張者」(53.0%)、「顧客・取引先」(52.7%)が「回復していない」または「回復途上にあるがいまだ十分ではない」と回答した。その要因として、「中国本土を含めた往来が困難(中国ビザ取得要)」「渡航・滞在費の高騰」「Web会議の普及」などが挙げられた(回答多数順)。

防疫措置撤廃後の現在、中国本土ビザ免除再開めどと福島原発ALPS処理水の影響が主な懸案

業務遂行上の懸念点や、総領事館、ジェトロ、商工会議所に対する要望について尋ねたところ(自由記述形式)、中国ビザの免除再開や要件の緩和、福島第1原発のALPS処理水放出(2023年7月14日記事参照)に関する情報発信や風評被害防止に向けた取り組みを求める声が多く寄せられた。また、香港政府への期待(自由記述形式)については、前述の2点に加え、回答企業の4割から香港政府による補助金の拡充を望む声が挙がった。

(注)DI値はDiffusion Indexの略で、「改善」と回答した企業の割合から「悪化」「大幅悪化」とした企業の割合を差し引いた数。

(松浦広子)

(香港)

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