米UPSとチームスターズ、労使交渉で暫定合意を発表、スト回避の見通し高まる

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月28日

米国物流大手UPSは7月25日、同社を代表する労働組合のチームスターズと労使交渉を再開し、今後5年間の契約について暫定合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。UPSとチームスターズは過去数週間にわたる協議で、主に組合員の約半数を占めるパートタイム労働者の賃上げを巡る問題で対立していた。現行の労働契約が失効する7月31日までに新たな契約が結ばれなければ、約33万人規模のストライキが発生する可能性があった(2023年7月25日記事参照)。

チームスターズの声明によると、暫定合意には、全ての労働者の賃金引き上げやフルタイムの雇用創出、職場環境の改善などが含まれている。特に争点となっていた賃金引き上げについては、(1)フルタイムとパートタイムを問わず、時給を2023年内に2.75ドル、5年間の契約期間内に合計7.50ドル引き上げる、(2)現在雇用されているパートタイム労働者の時給を直ちに21ドル以上に引き上げる、(3)現在雇用されているパートタイム労働者の年功賃金を(1)の時給に加えて、最大1.50ドル引き上げるなどの内容が盛り込まれた。

チームスターズのショーン・オブライエン会長は「UPSは新たに300億ドルを拠出することで合意した。今回の契約は、労働運動に新たな基準を設定し、全ての労働者の賃金や労働条件の水準を引き上げた」と述べている。また、UPSのキャロル・トメ最高経営責任者(CEO)は「この契約は、UPSが競争力を維持し、顧客にサービスを提供し、事業を強固にするために必要な柔軟性を維持する一方で、UPSのフルタイム、パートタイムの従業員に業界をリードする賃金と福利厚生で報いるものだ。チームスターズ、UPS、顧客にとって、『ウィン・ウィン・ウィン』の合意だ」と述べている。

チームスターズは7月31日、米国とプエルトリコで176支部の代表者による会合を開いて暫定合意内容の検討・勧告を行い、後日これを組合員による投票にかける予定だ(注1)。提案された全国基本契約と全ての補足契約(注2)について、組合員の過半数が受諾すれば、新契約は批准されたとみなされる。一方で、過半数が拒否した場合、批准を妨げている問題の解決に向けて再交渉が必要になる。

ジョー・バイデン大統領も今回の発表を歓迎し、「チームスターズとUPSが協力して誠実に交渉し、UPSの操業停止を回避する暫定合意に達したことを称賛する。この合意は、まだチームスターズの組合員による最終的な批准を待っているが、本日の発表により労働者にとってより良い条件に近づき、経済の勢いも増すだろう」と述べた。

(注1)投票期間は8月3~22日。

(注2)UPSとチームスターズの労働契約は2階層に分かれている。(1)全国基本契約(NMA)は、賃金、医療、年金などの項目について説明が記載されている。(2)補足契約は、国内の特定地域に限定した内容が記載され、40以上の補足事項と特約が含まれる。

(樫葉さくら)

(米国)

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